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AIニュースまとめ:新型コロナウイルス影響下で活躍しそうなAI活用事例3選!
こんにちは。スキルアップAIの泉です。
新型コロナ感染症が流行する中、多くの企業でAIを活用した事例が発表されています。
今回、医療業界による創薬や新型コロナウイルスに関連したAI活用事例を紹介します!
◇AI創薬
ニュースリリース:ディープラーニングで新薬を開発。「AI創薬」の大きな可能性
- 新薬の開発には、時間とコストがかかる
- ビッグデータ創薬:薬剤と疾患の莫大なデータの相関性から人が特徴を見つけ、創薬を行う
- AI創薬:これまでに開発された有効な薬の属性を学習し、新たな薬を推論
医薬品開発は以下の流れで進みます。
1.非臨床試験
ターゲットとなる生体標的分子の分類をみつける探索研究、薬の「たね」となる候補物質の同定、薬剤となる化合物の最適化、動物を使った試験
2.人間に適用する臨床試験
- 健康な人への臨床試験
- 少数の患者への臨床試験
- 多数の患者に、「薬の候補」の有効性、安全性、使い方を最終的に確認
この非臨床試験で約8〜10年、臨床試験で約6〜8年かかるようです。
製薬の成功率は2万~3万分の1で、開発の成功率を高めるためには、できるだけ早い段階で候補となる薬剤の有効性や毒性を予測することが必須となっています。
また、1000億円以上の開発費をかけても、市場に出る医薬品は1個以下になってしまうケースもあり、創薬のコストと時間の節約が求められています。
このような問題を解決するために、ビッグデータやAIを用いた創薬の手法が発展しています。
標的分子と薬剤の分子構造を根拠に、標的に結合する新薬候補の化合物を最適化する「計算創薬」が広く活用されています。
標的分子と薬剤が結合した後の、生体システムのゲノムワイドな反応・振る舞いに注目する技術を「生体プロファイル型創薬」といい、『ビッグデータ創薬』と『AI創薬』に分けられます。
この遺伝子発現プロファイルとは、「個人や特定の種類の組織における特定の遺伝子の発現と、遺伝子変異に関する情報」を指します。
ビッグデータ創薬とは、遺伝子発現プロファイルなどを比較することで、薬剤の有効性や毒性・副作用などを予測する方法です。
疾患と薬剤に関するプロファイルのビッグデータを活用し、両者が負に相関する場合は薬剤の有効性が期待でき、正に相関する場合は毒性・副作用が予測可能です。
AI創薬とは、これまでの有効な薬の属性を学習し、新たな薬を推論する方法です。
少し前の例として、15種類の生体の標的分子に対して、有効な数千~約1万に及ぶ化合物データから異なる構造活性相関のデータを学習させ、有効性が未知の化合物の生物学的活性を予測した事例などがあります。
その後のAI創薬の技術の発展により、数万もの標的分子に対する数十万の化合物を対象とする研究でも有効性が予測できるようになりました。
記事内では、海外と比較して日本の製薬会社ではAI創薬に本格的に取り組んでいる企業は少なく、ビッグデータのデータ量を多くすることが重要だと述べられています。
最近では、DNAやアミノ酸などのコード配列を、未知の構造を持つ一種の言語として扱い、自然言語処理の技術をウイルス変異の予測に活用する例も見られます。
就活の際に自然言語処理を利用したワクチン開発を研究している方にお話を聞く機会がありました。文章を分析したり生成したりする自然言語処理と、ワクチンが結びつくことにとても驚きました。また、その方は生物分野の研究者ではなく、情報分野の研究者でした。
また、最近は複雑な治験関連の事務作業を効率化することを目的にAIが使われることもあり、今後ワクチンを「作る」段階と「試す」段階まで幅広いフェーズでAIが活用されそうです。
- 遺伝子発現プロファイル、参考元: 遺伝子発現プロファイルとは何?
- 治験、参考元: 治験の3つのステップ
- 生物医学研究における自然言語処理の活用参考元: アフターコロナのAIトレンド:自然言語処理、医療、金融、農業のイノベーション
- AI技術を活用した治験効率化ソリューション: 中外製薬とNTTデータ、AI技術を活用した治験効率化ソリューションの実証を完了
◇Google、コロナ感染者予測
ニュースリリース:COVID-19 感染予測 (日本版) の公開について
- GoogleはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の日本全国の感染の広がりに関する予測データを提供
- 都道府県別の対象期間 (将来28日間)中に予測される死亡者数、陽性者数、入院・療養患者数を予測
- 予測モデルは、適切な対処を検討・準備する上での手掛かりの1つとしての利用が推奨される
Google Cloudは、米国で予測開始日から将来 14日間における米国内のCOVID-19陽性者や死亡者数などの予測を行う、COVID-19 Public Forecastsを公開しています。
米国で提供しているCOVID-19 Public Forecasts はAIと膨大な疫学的データを組み合わせ、時系列の予測を扱う機械学習手法を採用することで感染者の予測を実現しました。米国のモデルは米国国勢調査局などの一般公開データを基にしており、データセットの更新を続けています。これを日本版に拡張する形で、日本国内の将来28日間の陽性者や死亡者数を予測しています。
米国版から日本版を作成する調整としては、予測対象期間の拡張、データセットの追加などや、モデルの強化による予測精度の改善が行なわれました。
また、感染の様子や広がり方などの基本条件は、米国版と日本版で同じであるという前提のもとに開発されています(例:感染は離れた場所よりも近隣の地域で広がりやすい等)。
日本版モデルでは、日本のデータセットのみを利用してトレーニングを行っており、使用されたデータには厚生労働省が発表している新型コロナウイルス感染症陽性者数および死亡者数等のオープンデータなどが含まれています。
この様に陽性者数や入院・療養等患者数、死亡者数、また人々の移動状況について国内のデータを使用しているため、予測結果には国内の感染状況やそれに対する人々の反応、生活環境など日本独自の状況が反映されています。
予測データは更新されますが、1〜3日遅れてデータが更新されるので、最新情報が結果に含まれていない可能性があるそうです。
こういった予測は政府や地方自治体による素早く正確な現状把握と、対応計画を立てることに役立つ可能性があります。
一方、この予測サービスは、あくまでCOVID-19の影響を受ける公的機関などの組織が、適切な対処を検討・準備する上で参考となる情報の一つとして利用されることを目的に公開されています。
「利用の際のユーザーガイドの参照」と、「複数の参照可能なデータと合わせた活用」が求められています。
今回の予測関連のページを見ている際に、Google BigQueryというサービスが気になりました。これは、Googleが提供するビッグデータの解析サービスの一つだそうです。
膨大なデータに対して、集計・分析処理を極めて高速に実行可能です。Google社内では、スパム解析などに用いられています。
データの処理速度が早い点、データベースの専門知識がなくても扱える点、他のGoogle Cloud Platform提供サービスとの連携のしやすさが特徴のようです。
私はGoogleのサービスは、メールやクラウド、Google Colaboratoryなどしか使わないので、Googleが出しているサービスの多彩さに驚かされます。機会があれば、他のサービスも使ってみたいです。
- Google予測サイト: COVID-19 感染予測(日本版)
- ユーザーガイド: COVID-19 感染予測 (日本版):ユーザーガイド
◇阪大、唾液献体から5分で新型コロナウイルスを診断する技術を開発
ニュースリリース:唾液で新型コロナウイルスを5分で迅速検査
- 大阪大学がAIとナノポアを融合させた技術を開発
- 唾液を5分間計測し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を90%以上の感度・特異度で診断することに成功
新型コロナのような感染症の拡大を防ぐためには、感染しているかどうかを見極める検査技術が必要とされます。
その検査には、「結果が出るまでの時間が短い」こと、「精度が高いこと」が求められます。
しかし、最近新型コロナ検査として多く用いられるPCR検査の場合、精度は良いが時間がかかるという課題がありました。
そういった課題を今回開発された技術によって解決できる可能性がでてきました。
新技術を用いた実験の際に、培養されたSARS、MERS、SARS-2、229Eコロナウイルスを高精度に識別することに成功したそうです。
また、唾液検体を5分間計測するだけで、陽性・陰性を感度90%・特異度96%で検査できることが実証されました。
新技術には1個のウイルスを電流で計測できるナノポアと、その電流波形を学習するAIを用いています。
ナノポアとは、ナノメートル(1㍍の10億分の1)という超微細なサイズの穴(ポア)のことです。
このナノポアに、紐状に長く伸ばした1本のDNAを通すと、DNA上に並んだ塩基が通過する際に、ポア内に置かれた二つのナノ電極対の間に各塩基で異なる電流が通ります。その違いを測り、塩基配列を計測します。
PCR検査は、まずDNAの複製を作り、それをもとに解読していくという方法です。
最初にDNAの複製を大量に作る必要が有り、時間がかかる点、特殊な試薬を必要とする点などの問題点がありました。
しかし、ナノポアを用いれば、1本のDNAがあれば作業できるため、DNAの複製を作る手間や特殊な試薬が必要ないそうです。
したがって、PCR検査よりも迅速でコストの削減が可能です。
新技術では、ウイルスよりも大きな直径を持ち電解質で満たされたナノポアを使って、ウイルスの性状を読み取り、その電流のパターンをAIに学ばせることで1個のウイルス性状を読み取っています。
実際に、この技術は今年春のセンバツ高校野球で実施され、PCR検査との一致率100%を達成しました。
私は化学系の最新技術には疎いのですが、こうしてAI以外の先端技術とAIを組み合わせた例はとても興味深かったです。
今回も、「ナノポア」だけでは自分には有用性があまり理解できなかったかもしれませんが、AIと連携されることでその重要性が実感できました。
分野を横断した技術活用が必要であり、自分が興味のある分野以外技術にも普段から注目していきたいですね。
おわりに
いかがだったでしょうか?
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今後も、AI関連ニュースの記事を共有していきたいと思います。ご期待ください!
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