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【イベント】“データ活用のポイントは「意思決定プロセス」にあり!データドリブンな組織のつくり方”開催レポート
2022年3月15日(火)、滋賀大学の河本薫教授をお迎えしオンラインイベント “データ活用のポイントは「意思決定プロセス」にあり!データドリブンな組織のつくり方” を開催しました。
河本教授は大阪ガスのデータ分析組織であるビジネスアナリシスセンターの所長を務め、現在では滋賀大学データサイエンス学部で教鞭をとっています。1月には新著『データドリブン思考』を上梓したばかりで、今回のイベントでは同著の内容や執筆背景を中心にお話いただきました。
河本薫教授プロフィール かわもと・かおる 博士(工学) 大阪ガスにてガス機器の故障予測から市場価格のリスク評価など、データサイエンティストとして活躍。1998年、米ローレンスバークレー国立研究所でデータ分析に従事。2011年、大阪ガスビジネスアナリシスセンター所長に就任。2018年より滋賀大学データサイエンス学部教授(現職)。主な著書に『最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか』(日経BP、2017年)、『会社を変える分析の力』(講談社、2013)。
データやAIは手段に過ぎない
昨今、データやAIでビジネス課題を解決する経営手法であるデータドリブン経営という言葉が語られることが多いですが、残念ながら河本先生の元には多くの失敗例が届いているといいます。具体的な失敗例としては、データサイエンティストを育てたものの機能しない、データ基盤や分析ツールに投資したもののうまく活用されず成果が出ないといったものです。
なぜこのような失敗が起きるのかという疑問に対して、河本教授の見立ては「データやAIが直接ビジネス課題を解決してくれると勘違いしているから」というものです。
アメリカの心理学者/行動経済学者であるダニエル・カーネマンの「組織とは、意思決定を生産する工場である」という言葉を引き合いに出しながら、企業の中で起きる多くの失敗、例えば不良品の発生やコスト増加の要因は悪い意思決定にあり、つまるところ意思決定の生産の仕方が悪いからであると説明します。
データやAIはこの意思決定の生産過程において、勘と経験ではなく、合理的な生産方法という課題解決を与えてくれるものであり、これこそがデータドリブン経営のエッセンスであると指摘します。
データドリブン思考
それではデータドリブン思考とは一体どのようなものでしょうか。河本教授はデータドリブン思考を3つに分解して説明します。
- ビジネス課題を設定する
- 意思決定プロセスの課題に掘り下げる
- データドリブンな意志決定プロセス設計する
本来はこの工程を経たうえで、「データ・AIで解く」というステップに進むべきですが、多くの企業が最後の「データ・AIで解く」というステップばかりに注力して、①~③のデータドリブン思考を疎かにしてしまっている傾向があります。地盤となる部分が出来ていないので、どんなにデータやAIで解く部分に注力しても結果が出ないのです。
イベントではこの後①~③のステップについて具体的に解説いただきました。詳細についてお知りになりたい方はぜひ河本先生の著書『データドリブン思考』をご一読ください。
データドリブン経営を実現するために
正しい方法を学んだだけではもちろんデータドリブン経営は実現しません。データドリブン企業になるためには3つの意欲が必要であると言います。
1つはビジネス担当者自身がデータ分析する意欲、2つ目はトップ・ミドル層がデータ活用推進役を担う意欲、そして最後は全社員が意思決定プロセス変革を進める意欲です。
最後の、「仕事のやり方を変えることに対する拒否」というのは多くのプロジェクトにおいて障壁となるものであり、変革を促すための仕組みの構築が大切だそうです。仕組みの構築にあたっては、現在の意思決定プロセスの棚おろし、変えない理由を問う、カイゼン大会を行う等の方法が示されました。
また、質疑応答においても「従来のやり方を変えたくない層の抵抗があるのですが~理解してもらうためのポイントを教えてください」という質問がありました。これに対しては、先に述べたものの他、経営層を巻き込んで早めの内から社内で広報する機会を作っていくことが大切と回答がありました。
イベントはおよそ1時間で終了しましたが、四半世紀に渡る河本先生の経験が凝縮された時間でした。特に、データドリブン思考やその実行方法については、いまだ書籍などで言語化されている例が少なく、企業のDX推進担当部署等から集まった参加者の方々にとっても、先駆者の声を直接聞ける貴重な機会となりました。
データドリブンな経営を実践するための知見については著書『データドリブン思考』をぜひご覧ください。
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