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DX推進にAIが必要な理由とは?AIを活用したDXの成功事例も合わせて解説
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は当たり前に使われるようになっています。日本において、経済産業省がDXの必要性をガイドラインで定めており、注目度が高まっています。
このDXをビジネスにおいて推進するための代表的かつ革新的な手段の1つに、AI(人工知能)の活用があります。AIを上手く活用すれば、今までにない革新的なサービスや顧客体験を生み出せます。
ところで、DXの推進とAIの導入の違いを明確に理解できていますか?
AIを導入すればDXの推進を達成できると考えている人は少なくありません。しかし、必ずしもAIの導入がDXの推進につながるわけではないのです。
本記事では、AIとDXの違いを正しく理解するために、それぞれの概要と関係性を整理した上で、DX推進にAIが必要な理由やAIを用いたDX推進の成功事例、AIを活用する際の重要ポイントについて解説します。DXを推進する際の具体的な手段がイメージしやすい内容ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
1.AIとDXの違い
AIとは
AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の頭文字をとった言葉で、日本語では「人工知能」と訳されます。
AIの定義は専門家の間でも定まっておらず、明確になっていませんが、ジョン・マッカーシーという研究者は「知能を持つコンピュータプログラムを作る科学と技術のこと」だと定義しています。
AIを活用すると、画像や音声、テキストなどのデータを認識したり、データの予測などが行えます。
>【AI活用事例20選】カテゴリ別に人工知能の応用技術をご紹介!
DXとは
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション」)のことで、一般的に「デジタルでないものをデジタルにすることにより、企業を変革すること」を指します。
DXという言葉は、スウェーデンにあるウメオ大学の教授であるエリック・ストルターマンが2004年に提唱したのがはじまりです。発表した論文の中では、「デジタル技術によって人々の生活をよりよくする方法」を研究することの必要性が述べられています。
その後、2018年の経済産業省のレポート「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」でDXが取り上げられたことをきっかけに、日本企業の多くがDXの重要性を認識し始めました。
AIとDXの関係性
AIはビッグデータを使ってDXを実現するための代表的かつ革新的な手段の1つです。DXによって、各企業では業務改善・効率化、既存のビジネスの拡大、新規ビジネス創出の実現などを目指しています。これらを実現するための手段として、AIの導入が重要視されています。
そのため、DX推進にはAIの技術特性を理解し、自社データに応用できるAI利活用スキルが重要なのです。DXを成功に導くにはAIという手段をどう使い、どう戦略を立てるのかがDX推進の第一歩だといえます。
DXでは、どの業務をAIによる自動化に置き換えることが適切かどうか判断し、ツールの選定や業務フローの見直しを実施します。しかし、多額の費用を使ってAIを導入しても、予想を下回る成果しか得られない可能性もあります。この判断は容易でなく、専門的な知識を持って慎重にすべきです。
2.DX推進の課題とAI導入の必要性
DX推進において、実際にAIを導入しようとするといくつかの課題が生じます。この項目では、DX推進における課題とAI導入の必要性について解説します。
課題①経営層のデジタルリテラシーの低さ
第一に、経営トップがDXの必要性を認識していないと、DXは進みません。そのため、経営トップ自身もデジタルリテラシーを身につける必要があります。
課題②社員のデジタルリテラシーの低さ
実際にDXを推進するのは社員です。その推進役である社員のデジタルリテラシーが低いと、DXが円滑に進むことはありません。社員もデジタルリテラシーを身につける必要があります。
以下の記事では、経済産業省が定めているDXリテラシー標準の重要性や、DXリテラシーを高める方法について詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
課題③レガシーシステム
レガシーシステムとは、構築されてから長い年月が経ち、さまざまな問題を生じさせているシステムのことを指します。
レガシーシステムの問題点として、以下の点が挙げられます。
- 技術面の老朽化
- システムの肥大化・複雑化
- ブラックボックス化
- メンテナンスコストが高い
- データを活用しづらい
- 新しいサービスを始めにくい
経済産業省は、2025年まで、レガシーシステムが残存した場合、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じると試算しており、これを「2025年の崖」と呼んでいます。
参考:DXレポート
経済産業省『~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』
DX推進にAI導入が必要な理由とは
DXが必要とされる背景には、2010年代以降に起きた第4次産業革命が理由として挙げられます。そして、第4次産業革命における重要技術の1つに、AIがあります。
内閣府の「日本経済2016-2017」では、第4次産業革命とは「18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す」といわれています。
1990年代のパソコンの普及に始まり、2000年代頃にはインターネットの普及、その後もIoTデバイスの普及や計算機の処理性能の向上が進みました。そして2010年頃からはスマホの普及、データ量の増加、AI技術の発展につながります。
これらを総称して指す言葉が第4次産業革命です。第4次産業革命によって、情報伝達の高速化が可能になりました。
その結果、世の中の動きもどんどん速くなりました。このようなテクノロジーの進化によって、あらゆるものが複雑化し、先行きが見えにくい不安定なビジネス環境をVUCA(ブーカ)といいます。そして、こういった時代を総称して「VUCA時代」と呼んでいます。
このような変化の速い時代に対応するためには、市場変化やユーザーニーズを素早く察知し、迅速にサービスを改善することが必要です。つまり、デジタル技術を活用し、今までにない「速さ」「正確さ」でビジネスを回さなければならないという状況になってきているということです。
そのため、DXが必要とされており、同時にDXを実現するための重要技術であるAIを導入することが必要視されています。
3.AIによるDX推進の成功事例
この項目では、AIによるDX推進の成功事例を4つ紹介します。
無人決済システム
株式会社ファミリーマート、株式会社TOUCHTOGO、東武鉄道株式会社、東武商事株式会社は、鉄道利用者がウォークスルーで短時間で買い物ができるシステムを開発しました。
開発の背景には、鉄道利用者から、朝の通勤時や移動の合間を使って短時間で買い物したいというニーズが増えていたことや、コロナ禍で非接触での買い物の需要が増したことが挙げられます。店舗の運営やオペレーションにかかるコストの削減と非対面決済の推進を目的に導入しました。
出典:『東武鉄道のファミリーマートで無人決済システムを導入へ ファミリーマート岩槻駅店を10月12日リニューアルオープン!~スピーディで快適なお買い物環境と店舗オペレーション省力化の実現~』
無人決済システムは、天井のカメラと棚のセンサーによって完全無人決済を実現しています。導入によって、鉄道利用者の利便性の向上はもちろん、人材不足解消にもつながりました。
同じようなサービスに、Amazon Go無人決済店舗があります。Amazon Go無人決済店舗は、カメラとAIによって実現されました。
買い物をしたい人は、事前にスマートフォンに専用アプリをインストールし、その専用アプリを起動して入店します。購入したい商品をバッグや袋に詰めて店舗から出る際、店内のカメラによって購入商品が自動的に判断され、精算と決済が自動的に完了します。
待ち時間予測システム
日本電気株式会社は、羽田空港国際線旅客ターミナルの空港保安検査場の混雑状況をリアルタイムに分析し、可視化するシステムを提供しました。
出典:『NEC、羽田空港国際線旅客ターミナルの保安検査場に「待ち時間予測システム」を構築』
このシステムでは、2カ所ある検査場の待ち時間の予測を完全に自動化しています。このシステムの導入前の空港利用者は、手荷物検査を受けるために長時間並ばなければならず、貴重な時間を無駄にしていました。
このシステムの導入により、表示される混雑状況を見て、2つあるうちどちらの検査場を利用すればいいかを判断できるようになりました。また、検査場の利用率の平準化により、航空機運航の遅延の減少にも期待が寄せられています。
AI需要予測サービス「サキミル」
ソフトバンク株式会社、一般財団法人日本気象協会が提供する「サキミル」は、小売や飲食業界向けに、人の流れや気象データを活用したAIによって需要を予測します。業務効率化や販促などの側面から、小売業や飲食業を支援し、DX化を推進することを目的としています。
出典:『人流・気象データなどを活用した小売り・飲食業界向けAI需要予測サービス「サキミル」を提供開始』
年々深刻化している食品廃棄は、年間570万トンにも上るといわれています。また、小売業界や飲食業界では、人材確保が課題となっています。
独自のAIアルゴリズムによって高精度な分析予測が可能なこのシステムでは、人流統計データを活用して、人流の動向を把握できます。発注業務に活かせば、フードロスの削減や生産性の向上に貢献できます。
デジタルサイネージ効果測定システム「あいも」
デジタルサイネージは普及する一方で、以下のような課題を抱えています。
- 視聴者情報が少ない
- 効果測定が難しく投資効果が分かりにくい
- どのようなコンテンツを出せば効果が見込めるのか分かりにくい
「あいも」は、効果的なコンテンツ運用の実現を目指し、デジタルサイネージ効果を測定する目的で開発されました。実施団体は、以下の通りです。
- 株式会社オープンストリーム
- 日本コンピュータビジョン株式会社
- NEXCO西日本コミュニケーションズ
NEXCO西日本のデジタルサイネージに試験的に導入し、デジタルサイネージの投資対効果を測定しています。
出典:『オープンストリーム、デジタルサイネージ効果測定システム「あいも」を開発 高速道路サービスエリア試験導入』
「あいも」は汎用カメラと世界最高峰のAI技術を組み合わせており、数をカウントする精度は95%以上、分析精度は90%以上と、認識精度が非常に高いです。また、分析情報の集計を検証することによって、より効果的なコンテンツの運用が期待できます。
4.AIを用いたDX推進の3つの重要点
AIを用いたDX推進をスムーズにするには、次の3点が重要なポイントになります。
- データの収集
- AI人材の教育
- ビジョンの策定とPDCAによる継続した改善
それぞれのポイントについて解説していきます。
①データの収集
AIの活用には、データが重要です。自社のDX推進にAIを適用するには、データがある範囲に限定されますし、AIに与えるデータをどれだけ収集できるかがDX推進の鍵を握ると言っても過言ではありません。
特にどの会社でも見られるのが、異常データの圧倒的な不足です。正常なデータは多く存在しますが、異常データは不足する傾向にあります。
自社の業務システムからデータを収集して汎用的なデータベースに集約し、多様な用途でデータを利用できるような取り組みを実践しておくと、継続かつ多分野でのAI導入がスムーズに進むでしょう。
②AI人材の教育
AIの活用のためには、AI開発の実績や知見が豊富な人材が必要不可欠です。AIの内製化を図る場合はもちろん、AI開発を外注する場合には発注先と的確な会話ができるAIに関する知識を持った人材を確保する必要があります。
しかし、人材不足が叫ばれる今、データサイエンティストをはじめAIについて理解している人材を獲得するのは非常に難しいです。
そこで、社内にいる人材に対して教育を行い、AI人材としてスキルアップを図るための育成計画を立てましょう。AIを理解してビジネスを進めることができるスキルがある人材は、研修などを活用すれば十分に育成できる可能性があります。長期的には、常に新しい技術を学び続けたくなる仕組みを作ることが重要です。AIによるDX推進を進めるなら、AI人材の教育は非常に重要だといえます。
AI人材とは|需要や職種、AI人材になるために必要なスキル
AI人材の育成方法、社内育成について下記の記事で詳しく解説していますので合わせて確認してみてください。
「AI人材の育成方法、社内育成の鍵は新卒社員へのAI研修にあり」
③ビジョンの策定とPDCAによる継続した改善
自社の事業への影響を踏まえ、DXに関する自社のビジョンを定めることが重要です。会社としてどうしたいのか?AIを活用して何を実現したいのか?その結果、自社のビジネスにどのように役に立つのか?など、明確なビジョンを設定しておきましょう。
AIを実業務に導入する場合、どの程度の精度であれば導入できるか、基準となる目標値を決めておく必要があります。なぜなら一般的にAIは、100%の精度で回答することができないからです。
新たな取り組みやサービスを開発する場合、実際に利用したユーザにアンケートを実施し、得られた満足度などのデータをもとに、指標を決めるといいでしょう。実際に遂行している業務をAI化する場合、今の業務の精度を目標とすべきです。また、精度が改善しない場合の撤退条件も決めておくとよいです。
5.まとめ
多くの企業がDX推進の必要性を認識し取り組んでいますが、AI人材の不足によりAIが活用できず、DXが順調に進んでいる企業は多くありません。一方で、AI人材が豊富な企業ではAI活用が進んでおり、DX推進に成功している企業が多いです。
DXは短期間で成果が出るものではなく、長期的に取り組む大きなプロジェクトです。データ収集、目標設定と継続した改善はもちろん、社内のAI人材の育成を進め、DX推進を成功に導きましょう。
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