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DX人材育成とは?人材育成の現状と成功に向けた育成の方法を徹底解説


DXとはデジタル技術を活用して業務やサービス、ビジネスモデルを革新し、企業全体の競争優位性を確立することです。しかしこれを推進するためには、DXを理解しデジタル技術を使いこなせる「先端IT人材=DX人材」が必要不可欠です。本記事では、DX人材が必要な理由や社会的背景、育成方法、課題、注意点について解説します。
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DX人材とは?
DX人材とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために必要なスキルや知識、マインドを持った人材のことを指します。経済産業省では、DX人材を以下のように定義しています。
産業界における DX を進めるためには、各企業において社内の DX 活動をけん引する DX 人材の存在が不可欠である。ここでいう「DX 人材」とは、自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材を指す。
(出典)経済産業省資料「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2(中間取りまとめ)」(令和2年12月28日 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会
この定義から、DX人材とは単にデジタル技術に詳しいだけでなく、デジタル技術を活用してビジネスを革新することができる人材であり、DX推進のためにそのような人材が求められていることがわかります。
DX人材については、「DX人材とは?担う職種・必要なスキルとマインド・育成と獲得方法を解説」記事で詳しくご紹介しています。
ただし、DX人材はまずITの知識、それも最新の先端ITの知識が必須となってきます。この条件をクリアできるIT人材の不足について次の章で解説します。
DX人材不足の深刻化と人材育成の必要性
IT人材を取り巻く状況は実際どうなっているのか、なぜ人材獲得のために「育成」が必要なのかについて解説します。
IT人材は慢性的に不足している
DXを社内で育成する必要性を理解するために、まず「IT人材」の不足がどれほど深刻な問題なのかを具体的に見てみましょう。
以下は、経済産業省資料によるIT人材需給に関する試算結果です。IIT需要の伸びを「低」「中」「高」の3パターンで設定し、それぞれにおいてどの程度IT人材の需給ギャップが発生するかを求め、3つを対比させたグラフです。
【図1】IT 人材需給に関する主な試算結果の対比

(生産性上昇率 0.7%、IT 需要の伸び「低位」「中位」「高位」)
(出典)厚生労働省資料:「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(令和6年3月)
グラフを見ると、濃い水色の「不足数」が、調査時点の2018年以降、2030年まで、いずれの仮定パターンにおいても増加することがわかります。仮に、IT需要の伸びが最も多い高位シナリオの場合、約79万人のIT人材の不足が発生することになります。
先端IT人材と従来型IT人材とは
先ほどの調査では、「IT人材」全体の不足数を見ていました。実はIT人材は、そのスキルによって「先端IT人材」と「従来型IT人材」に分けられます。
IT業界では、新しい技術が次々と登場し、それらを活用したビジネスモデルが生まれ続けています(=DX)。AIやIoTといった技術は、私たちの生活や社会を大きく変えつつあり、これらの技術を扱うことができる人材を、経済産業省などは「先端IT人材」としており、その需要は今後ますます増加することが見込まれます。
ここで言う先端IT人材は、すなわちDXを推進するために必要な人材であり、DX人材そのもの、またはDX人材の成長予備軍と置き換えることもできるでしょう。
一方、従来型のITシステムの運用・保守といった業務に対応する人材は「従来型IT人材」とされます。従来型IT人材の需要は、中長期的には縮小傾向にあると予測されます。従来のITシステムの運用・保守といった仕事は、自動化やアウトソーシングが進み、人手が必要となる業務が減っていく可能性があるからです。
なお、それぞれの用語は経済産業省「IT人材需給に関する調査」によるものですが、IPA資料「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査~概要編~」での記述に置き換えると、「先端IT人材=先端IT従事者」、「従来型IT人材=先端IT非従事者」となります。これを、2019年時点のIT人材全体における割合で見てみると、先端IT従事者 =11.8%、先端IT非従事者=88.2%となり、従来型IT人材=先端IT非従事者が大多数を占めていることがわかります。
これらの点を理解せずに採用を行うと、企業はDX推進に従事する人材を採用したつもりが、実は従来型IT人材だったというミスマッチが起きてしまうおそれがあります。
従来型IT人材から先端IT人材、DX人材へのリスキル率は?
前掲した経済産業省「IT人材需給に関する調査」では、2015年から2030年までのIT人材のリスキル率の推移を試算しています。これによると、IT需要構造の変化を反映し、リスキル率は2.0%から5.8%の範囲で推移することがわかります。特に、2024年から2027年にかけては年率5%以上のリスキル率となり、従来型IT人材から先端IT人材(DX人材)への転換が加速すると推測されています。その後、先端IT需要の成長鈍化に伴って、リスキル率は低下していくとされています。
【図2】IT 需要に連動したリスキル率の推移予測

(出典)経済産業省資料:IT人材需給に関する調査(p.31)
ただしこの試算は年齢的な違いは考慮に入れておらず全年齢としています。現実的には若手のIT人材におけるリスキル率が高いと考えられています。
しかし5%程度のリスキル率では、不足する先端IT人材数十万人分をカバーすることは難しいと考えられます。
(参考)厚生労働省資料:「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(令和6年3月)
先端IT人材=DX人材が不足し従来型IT人材が余る「需給ギャップ」の現実
上記の「先端IT人材」と「従来型IT人材」の要素も加味して試算した需給のギャップ(実際に必要とされるであろう人数と、準備できるであろう人数の差)は、どうなるのでしょうか。試算によると、条件によっては先端IT人材が54.5万人不足するのに対し、従来型IT人材は9.7万に「余る」可能性があるとしています。
(参考)経済産業省資料:IT人材需給に関する調査(p.35)
企業は先端IT人材、DX人材の「育成」が必要
以上から、先端IT人材の慢性的な不足は今後も数年間は続くこと、外部から採用するのは難しいこと、何も対策をしなければDX人材は大きく増えないことがわかります。ここから、企業には社内で先端IT人材、DX人材を「育成する」という選択が求められます。
企業は、人材の不足を解消したいとき外部から雇用することを考えます。しかしここまで見てきたとおり、先端IT人材、DX人材は非常に不足しており簡単に採用することはできません。そこで注目されているのが、社内の人材を先端IT人材、DX人材に育成するリスキリングです。
リスキリングは、社員のスキルをアップデートし、新たな時代に対応できるようにするための取り組みです。これは、企業の競争力強化だけでなく、社員のキャリアアップにもつながる重要な施策です。
また内閣府資料「企業による人的資本投資の特徴と効果」でも、企業による積極的な人材育成への投資は、労働生産性の向上につながるとしています。
個人の努力だけに任せるのではなく、企業が積極的にサポートすることで、不足する先端IT人材、ひいてはDX人材の効率的な育成が期待できるでしょう。
【関連用語】リスキリングとは
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
(出典)経済産業省資料:「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
DX人材育成が「今」重要な理由
デジタル技術の進化と市場環境の変化が加速する中、DX人材の育成は企業の競争力向上に欠かせない課題となっています。なぜ「今」、DX人材育成が必要なのか。その背景を5つの観点から解説します。
企業が直面する喫緊の課題
企業が避けては通れない課題を3つご紹介します。
人材不足
経済産業省の調査レポート『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』によると、2025年には国内のIT人材が約79万人不足すると予測されています。この中でも特に不足しているのが、DXを推進する「先端IT人材」や「DXリーダー層」です。また、「DXを推進する意志とスキルを持つ人材」が社内にいない企業も多く、これがDX推進の大きな障壁となっています。
現場では以下のような課題が顕在化しています:
- DX推進が掛け声だけで終わり、実際の変革が進まない
- 「DXの知識はあるが、どう進めればいいか分からない」という現場の混乱
- 外部人材を採用しても高額であり、即効性がない
解決策: 自社でDX人材を育成することこそが、持続可能で効果的な解決策です。
技術革新の加速
AIやクラウド技術、生成AI(例:ChatGPT、Copilotなど)の登場により、業務のデジタル化と自動化が急速に進んでいます。特に生成AIは、自然言語処理や知識労働の分野で大きなインパクトを与え、労働生産性を飛躍的に向上させる可能性が指摘されています。また、クラウドやデータ活用はビジネスの「標準」となりつつあり、これらを使いこなすスキルが企業の競争力に直結しています。
重要なポイント:
- 「DXに適応できる人材がいなければ、企業の成長は停滞する」
- 今いる社員にデジタルスキルを学ばせ、企業文化を変えることが急務。
グローバル競争の激化
米国や中国ではDXが「生き残り戦略」として加速しており、日本企業はその競争に遅れを取っています。具体的には以下のデータからもその差が明らかです 多くの企業ではDX推進に向けた施策を実施していますが、その多くが以下のような限界に直面しています。
現場では以下のような課題が顕在化しています:
項目 | 米国 | 日本 |
DX推進企業の割合 | 60%以上 | 30%未満 |
DX人材育成に投資する企業 | 75% | 40%未満 |
DX関連予算の平均増加率 | +25% | +10%以下 |
このような状況下で、日本企業が競争力を維持するためには、DX人材育成と組織全体での変革が急務となっています。
【参照元】
大和総研「GAFA の台頭 世界でデータをめぐる競争が激化」
既存のDX施策の限界
多くの企業はDX推進に向けた施策を進めていますが、その多くが以下の課題に直面しています。
- 現場で実行されないDX戦略
DX推進部門は設置されているものの、現場レベルで実行されず形骸化しているケースがあります。
- 社員によるツール活用不足
システムやツールは導入されても、それを社員が使いこなせないため成果につながらない問題があります。
- リスキリングと業務結びつきの欠如
リスキリング研修を実施しても、それが実際の業務改善や変革につながらないことも多いです。
DXが進まない企業に共通する特徴
- DX戦略はあるものの、それを実行できる人材がいない。
- 知識偏重型研修で終わり、実践的なスキル習得が欠けている。
- 経営層が「IT部門だけ」の問題と捉え、組織全体で取り組む姿勢が弱い。
重要なポイント: 「ツール導入」だけでは不十分であり、「DXを推進できる人材」を育成しない限り成果は出ません。
人材のスキル不足
DXには単なるITスキルだけでなく、データ分析や意思決定能力、ビジネスモデル改革を推進する構想力が求められます。しかし、これらを兼ね備えた人材は非常に限られています。
組織の硬直性
DXは全社的な取り組みであるべきですが、部門間連携や現場レベルでの協力体制が不十分な場合、変革が進まないことがあります。また、外部ベンダー依存では自社内にノウハウが蓄積されず、持続的なDX推進が困難になります。
「DX人材育成」こそが課題解決の鍵
では、どうすればこれらの課題を克服できるのでしょうか?その答えは、自社内で「必要なスキルとマインドセット」を持つDX人材を育成することです。
既存社員のリスキリング
自社業務に精通した社員を対象にデジタルスキルや構想力を育成することで、即戦力としてDX推進を担える体制を構築できます。特に長年在籍している社員は現場理解や周囲からの信頼も厚く、変革を牽引しやすい利点があります。
- 即戦力としてDXを推進できる
- 現場の業務理解があるため、実践的な改革が可能
- 長年在籍している社員は周囲からの信頼も厚く、変革を牽引しやすい
「育成」と「実践」を両立できる最も現実的なアプローチとなります。
全社的な意識改革
DX人材育成は単なるスキル習得だけでなく、組織全体で「デジタル活用による価値創造」を目指す意識改革にもつながります。これにより、経営層から現場まで一体となった取り組みが可能になります。
- 経営層がDXの必要性を理解し、全社で取り組む姿勢を作る
- 現場レベルでのデジタル活用が当たり前になる
- 「業務改革」と「デジタル活用」が一体化する
DX人材育成は単なるスキル習得だけでなく、全社的な取り組みにて企業文化の変革にもつなげることが出来ます。
DX推進には多様なスキルとマインドセットを持つ人材が不可欠であり、その育成は喫緊の課題です。既存施策の限界を乗り越え、新たな価値創造と競争力向上を目指すためにも、「今」まさにDX人材育成に取り組むべき時期と言えるでしょう。
DX人材を自社で育成するメリット
採用が難しいDX人材を社内で育成することは、数を補うだけではないメリットがあります。ここでは、DX人材を自社内で育成するメリットについて解説します。
既存システムの一貫性を保つことができる
システム開発などを外部に委託する場合、社内のエンジニアや関連部署との間で認識のズレが生じやすくなります。また新しいシステムを導入した際、既存システムとの連携に問題が発生するリスクがありますが、この点もアウトソーシングのみに頼っていると、社内の人間が誰も自社システムを理解できておらず、ブラックボックス化してしまうおそれがあります。これにより、システム全体の一貫性が損なわれ、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
一方で、社内のDX人材が開発や保守を担うことで、企画段階から運用までの一連のプロセスをスムーズに進めることができ、システム全体の整合性を確保しやすくなります。
実際、ITベンダーの立場から見ても、クライアント企業の内部にシステム開発や運用がわかる人材がいることで特に非常時のコミュニケーションがうまくいくようになるため、人材育成を行ってほしいという意見があります。
自社の状況に合わせ長期的な計画で最適なDX化を推進できる
社内で育成されたDX人材がいると、自社の業務プロセスや課題を深く理解しているため、最適なDX戦略を立案し実行することができます。
例えば外部ベンダーに依頼する場合、自社の状況に合わせた柔軟な対応が難しいケースも考えられます。また契約期間やコストの問題もあり、短期で結果を求めがちです。しかしDX推進には中〜長期的な視野が必須で、短期で劇的な結果が出るものではありません。社内の人材であれば、状況に応じたきめ細やかな対応が可能です。
DX推進の社内体制構築がスムーズに進められる
社内でDXを推進することには組織全体の変革を伴うため、様々な部署との連携が不可欠です。社内のDX人材は、自社の業務を深く理解しているため、他の部署とのコミュニケーションを円滑に進め、スムーズなDX推進を支援することができます。また、組織全体の変革にも柔軟に対応し、より効果的なDXの実現が期待できます。

DX人材育成を成功に導く「5つのコアステップ」
人材育成の必要性を理解したところで、続いては成功に導くための基本的なステップを5段階で紹介します。
STEP1: 明確な育成目標の設定
DX人材育成の第一歩は、育成の目的と目標を明確にすることです。
下記のような理由から、育成目標の明確化が必要になります。
- 「とりあえず研修を実施」では成果が出ない
- 企業ごとに求められるDXスキルが異なる(データ活用?業務自動化?DX戦略策定?)
- 目標が明確でないと、育成の効果測定ができない
育成目標の具体例
カテゴリ | 具体的なスキル | KPI設定の例 |
データ活用 | データ分析、SQL、BIツール | データ活用プロジェクトを3件実施 |
業務改革 | プロセス改善、RPA活用 | 業務自動化で作業時間20%削減 |
DX推進 | DX戦略策定、アジャイル開発 | DX施策の提案数を年間5件以上 |
KPI(重要業績評価指標)を設定し、進捗を測定可能にすることで、育成プログラムの効果を客観的に評価できます。
STEP2: DX人材の選定
DX人材育成では、対象者選びが成功の鍵となります。スキルだけでなく、意欲や適性も重視して選定する必要があります。
よくある間違い
- 「ITスキルがある人だけを選ぶ」 → DXはビジネス視点も必要
- 「全員を対象にする」 → 意欲のない人に時間とコストをかけても効果が低い
適性のある人材の特徴
- デジタル技術への関心がある(新しいツールを試すのが好き)
- 変化をポジティブに捉える(「やってみよう!」という姿勢)
- 論理的思考力がある(データを分析し、意思決定できる)
- チームで協力できる(部門を横断してDXを推進するため)
「ポテンシャル人材」を見極めるために、社内アンケートや面談を活用すると効果的です。

STEP3: 育成計画の策定
育成計画では、インプット(座学や研修)とアウトプット(実践)のバランスが重要です。
よくある失敗
- 「とりあえずeラーニングを受けさせる」 → 実務で活かせなければ意味がない
- 「一度研修を受けたら終わり」 → 継続的なトレーニングが必要
効果的な育成計画のポイント
- 最初は基礎研修(インプット)を実施(eラーニング、座学)
- 次に実務に近い演習(アウトプット)を組み込む(ハンズオン、ケーススタディ)
- 最後に「実際の業務」で使う場を提供する(業務課題の解決に活用)
「学ぶだけ」で終わらせず、「実践の場を設ける」ことが成功のカギです。業務への応用まで含めた計画にすることで効果が最大化されます。
STEP4: 成長を加速する学習環境の構築
学習環境は、社員が継続的にスキルアップできる仕組みを整えることが重要です。
なぜ環境整備が重要なのか?
- 研修後の実践機会がなければスキルが定着しない
- 学習を継続するための「仲間」や「メンター」が必要
効果的な学習環境の整備
- OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を導入 → 実務を通じてスキルを定着
- メンター制度を導入 → DX経験者がサポートすることで学習効果UP
- 社内DXコミュニティを構築 → 勉強会や情報共有の場を設ける
心理的安全性のある環境で社員が安心して学べるよう配慮することも重要です。
STEP5: モチベーション維持と評価制度の設計
DX人材育成は一過性ではなく継続的な取り組みが求められるため、モチベーション維持と評価制度が欠かせません。
ありがちな失敗
- 「研修を受けても昇進や評価に影響しない」 → DX人材が育っても離職リスクが高まる
- 「新しいスキルを学んでも業務に反映されない」 → 学習意欲が低下する
モチベーション維持のための施策
- 評価制度にDXスキルを組み込む(「DXプロジェクト実績」を評価基準に)
- キャリアパスを明示(「DX推進リーダー」などの新しいポジションを作る)
- 報酬・インセンティブを用意(スキル習得やDX推進の成果を評価)
「学び続けたい」と思わせる仕組みづくりが重要です。例えば達成度に応じた報酬や昇進制度などがあります。
DX人材育成で「絶対に避けるべき」3つの落とし穴
DX人材育成は、正しいアプローチを取れば企業の競争力を大きく向上させます。しかし、間違った進め方をすると「時間とコストをかけても成果が出ない」状況に陥る可能性があります。
ここでは、DX人材育成で特に陥りがちな3つの落とし穴と、その回避策を解説します。
落とし穴1:研修「やりっぱなし」症候群
DX人材育成において、座学中心の研修だけで終わってしまい、実際の業務に活かされないケースが多く見られます。知識偏重型の研修では、社員が学んだ内容を実務に応用する機会がないため、スキルが定着せず、DX推進の成果が出ません。
典型的な失敗パターン
- eラーニングや座学研修を受けさせるだけで終わる
- 「学習すること」が目的化し、実務での活用が進まない
- 研修後に「どの業務でどう活かすのか」が不明確
DX人材育成でよくある失敗が、「知識を身につけさせたけれど、実務で活かせない」というケースです。特に、座学中心の研修を受けただけで終わってしまうと、学んだスキルが定着せず、業務改革につながりません。
回避策:OJTやハンズオン研修を組み合わせる
- 実践型トレーニングを導入(実際の業務課題を解決するワークショップ)
- 研修後に「実務での適用」を前提としたプロジェクトを用意
- メンターをつけて実務適用を支援
「学んだスキルをすぐに業務で活用する場」を提供することで、定着率が大幅に向上します。
落とし穴2:「リスキリング」の意味履き違え
リスキリング(学び直し)はDX人材育成で重要な取り組みですが、その目的を明確にしないまま進めると、「手段の目的化」に陥る危険があります。具体的には、「何のためにリスキリングをするのか?」が不明確なまま研修を実施すると、社員が学んだ内容が組織全体のDX戦略と結びつかず、成果につながりません。
典型的な失敗パターン
- 「DX人材育成=リスキリング」と思い込む
- とりあえずプログラミング研修やデータ分析研修を受講させる
- 受講した社員が「このスキル、業務でどう使うの?」と迷う
リスキリングは「目的」ではなく、「手段」です。しかし、多くの企業では「DXのためにリスキリングが必要だ!」という認識のもと、特定のスキル研修(Python、AI、データ分析など)を受けさせるだけになってしまいます。
その結果、「スキルを身につけたのに、活かす場がない」という状況になりがちです。
回避策:「何のためにリスキリングをするのか?」を明確に
- 業務課題を明確にし、「どのスキルが必要か?」を決める
- 「リスキリング後にどう活用するか?」まで設計する
- スキル習得後のキャリアパスを示し、モチベーションを維持
「何のためにリスキリングをするのか?」を明確にし、育成のゴールを設定するようにしましょう。
落とし穴3:育成担当者の「丸投げ」体質
DX人材育成は経営層から現場まで一体となって取り組むべき課題ですが、一部の企業では育成担当者に「丸投げ」されてしまうことがあります。この場合、経営層が育成戦略にコミットせず、現場も孤立してしまい、組織全体でDX推進力を高めることが困難になります。
典型的な失敗パターン
- DX人材育成を「人事部」に丸投げ
- 経営層がDXの重要性を理解しておらず、育成の支援をしない
- 研修を受けた社員が「現場でDXを推進しようとしても、上司が理解してくれない」
DX人材育成は、経営層の理解とコミットメントが不可欠です。しかし、多くの企業では「DXはIT部門や人事部がやるもの」と考え、育成プログラムを丸投げしてしまいます。その結果、育成された社員が「DXを推進しようとしても、組織が変わらない」という状況に陥ります。
回避策:経営層が育成戦略を明確に示し、現場と連携
- 経営層がDXの目的と戦略を明確にし、全社的な取り組みにする
- 育成プログラムを「人事部任せ」にせず、各部門が主体的に関与
- 育成したDX人材の活躍の場を作り、現場での推進を支援
経営層が育成戦略を明確に示し、現場と連携する体制を作ることが重要です。
スキルアップAIのDX人材育成

本章では、上記を踏まえてスキルアップ AI が実施している DX 人材育成の 5つのステップについてご紹介いたします。
1.人材育成計画

はじめに、自社の経営戦略や人材戦略に基づき、DX 人材育成の対象分野を決定していきます。対象分野を決めるうえでは、現在の従業員のスキル保有状況の棚卸しを行い、目指す状態とのギャップを明確化することが重要です。
目標と現状のギャップが明確になったら、現在不足している必須スキル・推奨スキルを定義していきます。最後に、対象分野毎のロードマップと必要な教育内容を整理し計画をたてていきます。
2.全社員向け教育

企業全体でDXを推進していくうえで全社員への教育は不可欠です。部署ごとで引っ張っていくDX推進人材を育成しつつ、全社員へのDXリテラシーを高めてボトムアップを図ることが重要です。
ただ、教育をしていくにしてもどのような定義で実施すればよいか判断に迷う事が多いため、経済産業省のデジタルスキル標準のうち、DXリテラシー標準を基準に評価をすることが増えてきています。
また、全社員にDXリテラシー教育をしていくには費用の面や受講効率を考慮してeラーニングで教育していくことがベターです。

最近では、学んで終わりではなくアセスメントを活用してスキルの定量評価を図る企業も増えてきており、DXスキルの可視化や人事考課指標として活用していたりもします。
3.DX推進人材向け教育

参考:スキルアップAIの講座マップ
本章の冒頭でお伝えしたように、全社員向けにリテラシー教育を実施するのとは別にDXを推進していく人材の教育も必要です。ドメイン知識を持っているかつ、DXを推進していくうえで自社の事業を推進していく人材は不可欠です。
この人材をドメイン知識の有している社員を教育することでDXを推進していくことが事業競争力を高めていく上で重要です。
また、企業によって事業内容は変わってくるため、ビジネスでの推進なのか、生成AI活用なのか、データ分析なのかと言った適した人材を整理した上で DX人材育成を進めていく必要があります。
4.伴走支援型教育

参考:スキルアップAI AI道場
全社員・DX推進スキルを学んだ後は、新たに学んだ知識・スキルを実務に活かしていくための機会を提供することが必要です。学んで終わりではなく、ビジネスへの適応をすることで初めて DX 人材育成がスタートしたと言っても過言ではありません。
たとえば、会議のなかで新たなアイデアを創造するための時間を意識的に設け、従業員から研修で得た知識や発想を出し合ってもらう取り組みなどが有効です。
また、それぞれの従業員が DX 人材育成の前後で生じた実務上の変化を共有したり、お互いの成長点をフィードバックし合ったりすることで、社内での DX推進の風土醸成につながります。
5.人材育成内製化 + コミュニティ構築

参考:スキルアップAI コミュニティ構築
ビジネスへの適応をしていく上で、継続していくコミュニティ・環境構築をしていくことも重要です。部署ごとでの溜まったナレッジの共有や勉強会の実施、成功事例の横展開などをしていくことで、中長期での事業成長につなげることができます。
まとめ
DX人材育成は、企業のDX推進、デジタル化への変革を成功させるための鍵となります。本記事では、DX人材育成の必要性とその理由、6つの課題と、成功につなげるためのポイントについて解説しました。DXに向いている人材を選抜し、スキルに合わせた育成プログラムを提供すること、座学と実学をバランスよく取り入れ社内に育成体制を構築することで、効果的な人材育成を実現できます。また、アジャイルの手法や概念を長期的に企業に浸透させ推進することや、育成過程を可視化・共有することで、より一層効果的な人材育成が可能となります。
DX人材の育成は、これからの企業の持続的な成長に不可欠な取り組みであり、継続的な努力が必要です。
サービス紹介

弊社スキルアップAIでは、今回解説したようなDX人材育成を行うことが出来るサービスを幅広く展開しています。
企業様のニーズに合わせてご提案をさせていただきますので、まずはお気軽にご連絡いただければと思います。
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