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DX人材とは?担う職種・必要なスキルとマインド・育成と獲得方法を解説


企業の競争が激化する近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためには単なるIT技術の導入だけでなく、組織全体を変革できる「DX人材」が必要です。
しかし、具体的にDX人材とはどのような人物を指し、どのような役割を担っているのでしょうか。本記事ではDX人材の定義と類型、求められるスキルやマインド、そして育成・獲得方法について詳しく解説します。
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DX人材とは?
はじめに、DX人材とは具体的に何を指し、どのようなスキルがある人物なのか解説します。
DX人材の定義と表記
「DX人材」という言葉自体は、公的な資料などで定着しているわけではありません。一般的には「DXを推進するために必要なスキルを持った人材」という意味で使われています。
この記事では以下をふまえ、経済産業省が言うところの「企業のDX推進戦略のために、必要なスキルを持った人材」を「DX人材」としています。
【経済産業省の資料による表記例】
(表記1)「DX人材」「DX推進に必要な人材」
令和元年7月公表「DX推進指標(サマリー)」での表記
(表記2)「デジタル人材」「DX戦略において、DX戦略の推進に必要な人材」
DXによる企業経営と企業価値を高める施策のための「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」での表記
(表記3)「DX推進人材」「DX推進に必要な人材」
「デジタルスキル標準 ver.1.2*」、DX人材を指す用語としての表記。(経済産業省HP:デジタルスキル標準 を参照)
*注)「DXリテラシー標準(DSS-L)」>2023年8月に見直され「DX推進スキル標準(DSS-P)」と改訂>2024年7月「デジタルスキル標準 ver.1.2」が公表(<改訂後概要版><改訂後版>)。改訂の理由としては、生成AIの登場・進化に伴う環境の変化によるDXに関わる人材に必要なスキルの変化が挙げられる。
DX人材に必要なスキルとは
DX人材と聞くと、IT技術に精通している人材を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし経済産業省が言うところのDX推進人材・デジタル人材は、実はひとくくりにすることが難しい多様な人材で構成されています。
経済産業省のガイドラインでは、ITエンジニアのようにデジタル技術に強い人材だけでなく、各事業部門でデジタル化の必要性を理解し、具体的な施策を立案できる人材、そしてプロジェクトを成功に導くためのリーダーシップを持つ人材などが挙げられています。
DXを成功させるためには、これらの異なるスキルを持つ人材が連携し、互いを補い合うことが重要です。
また同時に、これら多様なスキルをもつさまざまなDX人材が滞りなく連携して事業を推進していける「環境づくり」が企業には求められています。
DX人材が担う5つの代表的な職種
経済産業省の「DX推進スキル標準」では、企業や組織がDXを推進する場合に必要となる人材を、大きく5つの種類(職種)に分類し、定義しています。
ここでは経済産業省の定義する5つの「人材類型」である、「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」について解説します。

(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月),p70,第2章 DX推進スキル標準の構成
※各人材類型について、より詳しくは上記経産省資料p93~「第3章人材類型・ロール」を参照
ビジネスアーキテクト
「DX推進スキル標準」において、「ビジネスアーキテクト」の定義は以下のとおりです。
DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材
(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月)
アーキテクト(architect)とは、建設の分野では「設計者」の意味を持ちます。転じて、IT分野ではシステム全体の構造設計や、プロジェクト管理を行う技術者、またその職種やチームそのものを指します。
ここから、ビジネスアーキテクトは企業の戦略に基づいて業務のあり方を根本から見直し、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを設計する役割を担うものと考えられます。
またIPAの定義によると、ビジネスアーキテクトは新規事業の創出や既存事業の改善など、企業のDXにおけるあらゆる取り組みを目的設定から実行、そして効果測定まで一貫してリードする役割を担うものとされています。
具体的には、関係者間の調整を行ってプロジェクトを円滑に進めるだけでなく、デジタル技術の導入効果を検証し、継続的な改善に繋げることも求められます。
ビジネスアーキテクトは、DX推進に関連する全体の業務を俯瞰し、各部門間の連携を強化することで、業務効率の向上や新たな価値創造に貢献する役割といえるでしょう。そのためそれぞれのDX人材類型が「連携」を必須とするDX推進の方針においては、重要な役割を担っているといえます。
なお、ビジネスアーキテクトはそのスキルや担う役割から、プロダクトマネージャーと類似性があると定義されています。
(参考)IPA:コラム:ビジネスアーキテクトとプロダクトマネージャーについて
デザイナー
「DX推進スキル標準」において、「デザイナー」の定義は以下のとおりです。
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材
(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月)
デザイナーのロール(業務の違いごとにさらに詳細に分類したもの)は、「サービスデザイナー」「UX/UIデザイナー」「グラフィックデザイナー」の3つに分けられます。
【サービスデザイナー】
顧客体験設計、価値創造、サービスイノベーションを担当。
具体的には、顧客により良い体験を提供するための仕組み作り、顧客にとっての価値を最大化する製品やサービスの全体像のデザイン、新しいサービスや体験とは何か定義し、ビジネスを成長させるためのアイデアの具現化など。
【UX/UIデザイナー】
ユーザー体験をそこなわない、製品の機能と操作性が両立されたインターフェースデザインの実現を担当。
具体的には、製品やサービスを実際に使う人がより快適に、そして直感的に使えるような設計、インタフェースを追求、ユーザーに最高の体験を提供します。
【グラフィックデザイナー】
企業や製品のブランドイメージを視覚的に具体的に表現し、一貫性のあるデザインを作成。
デザインにより効果的なメッセージを伝えられるデジタルグラフィックやマーケティングデザインを行います。広告やパンフレットなど、さまざまなマーケティング素材のデザインを通じて、ブランド認知度向上に貢献するものです。
それ以外に、「倫理的な観点」をふまえたユーザーとの接点のデザインもポイントになります。仮に出来上がったデザインがどれほど優れていても、非倫理的な誘導を行っているなど倫理的観点において問題が見つかった場合は、そのデザインは差し戻しとなる可能性があります。
従来は「見せ方」「商品外観」を作ることが主な役割だったデザインですが、現在は市場のグローバル化によって、顧客のニーズや価値観の多様化・高度化、それらの移り変わりのスピードが早くなっています。そのため単なるデザインではなく、顧客が求める100%を目指すのではなく、それを超える価値の創出が企業の課題となっています。
そのため、顧客がその製品やサービスを使って得られる体験の特別性、リピーターになりたいと思える価値を与えられるデザインが求められているといえるでしょう。
データサイエンティスト
「DX推進スキル標準」において、「データサイエンティスト」の定義は以下のとおりです。
DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材
(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月)
データサイエンティストのロールは、「データビジネスストラテジスト」「データサイエンスプロフェッショナル」「データエンジニア」の3つに分けられます。
【データビジネスストラテジスト】
ストラテジスト(strategist)とは、「戦略(ストラテジー)を考える者、戦略家」を指します。例えば証券用語では投資情報を分析し戦略を立案する担当者を指します。
IT分野では「ITストラテジスト」と呼ばれることもあり、ITの高度な知見を用いて企業の課題を分析し、データ活用戦略を策定して企業の課題を明確化、解決・改善の実現に向けたロードマップを作成します。
IT戦略立案などを行うことから、開発プロセスの初期段階で重要な役割を担います。プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーの側面ももっています。
【データサイエンスプロフェッショナル】
データサイエンスプロフェッショナルは、高度なデータ分析技術を用いて、企業の課題解決や新たな価値創造に貢献します。
具体的には、大量のデータを分析し、隠された価値や新たなビジネスチャンスを発見するほか、分析結果に基づいて、より良いビジネス判断をサポートします。
【データエンジニア】
データエンジニアは、データサイエンティストチーム全体が円滑に分析を行えるよう、データ基盤を整備し、データの品質を担保します。
データ分析に必要なシステムやインフラを設計・構築し、運用し高品質なデータが分析に活用できるよう、データの品質管理を行います。
ソフトウェアエンジニア
「DX推進スキル標準」において、「ソフトウェアエンジニア」の定義は以下のとおりです。
DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材
(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月)
ソフトウェアエンジニアは、一般的に「DX人材」と言った場合に想像されやすい人材に最も近いかもしれません。実際にソフトウェアやシステムのプログラムを行い、ユーザーの触れる部分からそのバックグラウンドの信頼性までを含めた部分を設計、実装、運用します。
ソフトウェアエンジニアは、以下の4つに分類されます。主たる責任を持つ範囲がどこかによって分かれています。
【フロントエンドエンジニア】
主にユーザーが最初に触れる画面のデザインや操作性を作り出す、インターフェースに責任をもつエンジニアです。ウェブサイトやアプリの見た目や動きを、ユーザーが使いやすいように設計します。
【バックエンドエンジニア】
主にサーバにおける内部的な機能、仕組みを構築するエンジニアです。ユーザーに見えない部分で、データの処理やサーバーとの通信などを担当し正常に動作するための基盤を構築、システム全体の安定性を担保します。
【クラウドエンジニア/SRE】
システムが安定して稼働するための運用環境を整備、最適化し、信頼性を担保するための役割です。万が一問題が発生した場合に迅速に対応します。クラウド技術も活用して、スケーラブルで可用性の高いシステムを構築します。
【フィジカルコンピューティングエンジニア】
現実世界(物理領域)をデジタル化し、インターネットに繋ぐ技術(IoT)を用いて、様々なデバイスを制御したりデータを収集したりするシステムを開発し、デジタル世界と物理世界を繋ぐ役割を担います。
各エンジニアはそれぞれ異なる専門性を持っており、連携することで、より高度なデジタルサービスを実現します。またエンジニア間だけでなく各人材類型やロール間で協働します。
サイバーセキュリティ
「DX推進スキル標準」において、「サイバーセキュリティ」の定義は以下のとおりです。
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材
(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月)
【サイバーセキュリティマネージャー】
企業のデジタル化に伴うセキュリティリスクを分析し、効果的なセキュリティ対策を立案する役割です。また企業全体のセキュリティ体制を構築し、セキュリティに関する意思決定を行います。
その他、サイバー攻撃などによるリスクを評価し、最小限に抑えるための対策(リスクマネジメント)を講じます。
企業全体のセキュリティ戦略を策定し、セキュリティ体制を構築する「司令塔」のような役割といえるでしょう。
【サイバーセキュリティエンジニア】
サイバーセキュリティマネージャーが策定した戦略に基づき、具体的なセキュリティ対策を実装し、運用する「実行部隊」のような役割です。
サイバー攻撃からシステムを守るための技術的な対策を設計・実装します。またサイバー攻撃が発生した場合に、迅速に対応し、被害を最小限に抑えます。
システムのセキュリティ状況を常時監視し、異常な動きを検出します。またその監視体制を構築、運用します。

DX人材に求められるスキル
ここまで見てきたとおり、DX人材にはさまざまな類型があり、それぞれに求められる専門性やスキル、資格があります。
しかし各人材類型やロールは、「これだけ知っていればよい」「これさえできればよい」というものではなく、別の職種やロールの業務内容、専門的な知識についても知見をある程度もっていなければなりません。それにより、それぞれの人材が連携・協働して企業や組織のDX推進により貢献できるとともに、プロジェクトや開発プロセスの流れもスムーズになります。
また、必ずしも各人材が一つの類型を担当するのではなく、一人の人材が複数の類型やロールを担当することもあります。
全てのDX人材類型に求められるスキルについては、総務省資料に詳しく説明されています。以下は前述の5つのDX人材類型において、特に必要なスキルを簡単にまとめたものです。
「ビジネス変革」に関するスキル
ビジネスアーキテクト、デザイナーに特に必要とされるスキル。以下のスキル項目が重要度が高くなります。ただし、全てのDX人材類型とロールにおいて、重要度の高低はあれど、必要とされる能力ともいえます。
- プロジェクトマネジメントやビジネス事態の作成と実行
- 価値の創造、顧客の視点に立った製品やサービスの開発とより上質な顧客体験の創出
- UI/UXとマーケティングの知識
- チーム活動、連携、変革への意欲とマネジメント ほか
「データ活用」に関するスキル
データサイエンティスト・サイバーセキュリティに特に必要とされるスキル。以下のスキル項目が重要度が高く、データ分析や活用はもちろんだが、マネジメント能力も求められます。
- データ、AIの戦略的活用
- プロジェクトマネジメント能力
- アナリシス、検証などデータ分析能力
- 顧客視点に立った検証とフィードバック
- 倫理観、プライバシー保護の観点(プライバシー・バイ・デザインに則った製品開発) ほか
「テクノロジー」に関するスキル
データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニアに特に必要とされるスキル。以下のスキル項目の重要度が高くなっています。システムやソフトウェア開発のための実践的な技術力や設計能力、運用能力が必要。またセキュリティマネジメントの知識や先進技術への理解、新しい技術への貪欲な好奇心も備え持つ必要があります。
- ソフトウェアの開発、設計に関する基本的な知識
- ウェブアプリケーションやクラウドなどサービス活用のための基本的な知識
- フロントエンドやバックエンドシステム開発のための知識とスキル
- データに対する理解と活用ができる
- システムエンジニアリングの基本的かつ全般的な知識
- その他先端技術に関する知識とスキル
- プライバシーやセキュリティの知識とそれらをあらかじめ盛り込んだ開発手法の実践(プライバシー・バイ・デザイン、セキュリティ・バイ・デザイン)
「セキュリティ」に関するスキル
データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティに特に必要とされるスキル。以下のスキル項目の重要度が高くなっています。
- セキュリティマネジメント
- セキュリティ体制の構築
- インシデント対応や継続的な運用
- プライバシーやセキュリティの知識とそれらをあらかじめ盛り込んだ開発手法の実践(プライバシー・バイ・デザイン、セキュリティ・バイ・デザイン)
「パーソナルスキル」
5つのDX人材類型、各ロール全てで必要とされるスキル。ただし全員が同時に発揮する必要はなく、「役割や状況に応じた実践力が必要」とされています。
「ヒューマンスキル」は、リーダーシップやコラボレーションのスキルです。ビジネス変革や戦略立案において、また各DX人材類型間での連携や協働において必要とされる能力といえるでしょう。
「コンセプチュアルスキル」は、ゴール設定、創造的な問題解決、批判的思考、適応力のスキルです。プロジェクトや自分の関わるタスクを最後までやり遂げる能力、問題が起きたときの対応力、課題に対して深く思考し、時には批判的精神をもって問題を追及できる能力などを指します。
DX人材類型・ロールを理解するためのスキルマッピングシート
経済産業省では、各人材類型とロールが必要とするスキルについてスキルマッピングシートを提示しています。
それぞれのDX人材類型・ロールでどのような能力が必要かをカテゴリ分けし、重要度をa~d、zに分けて記載しています。重要度の高い部分のスキルが多い職種やロールがその人材の最適な類型ということになります。
これを見ると、パーソナルスキルについては、技術的なスキルや業務における経験値と異なり、「人間的側面のスキル」とされています。実践力があるか、、状況に応じて臨機応変に動けるか、各ロールとの連携や協働ができるかなど、全てのDX人材・ロールに普遍的に求められるスキルとなっていることがわかります。
【参考図】ビジネスアーキテクト(新規事業開発)のスキルマッピング

(出典)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月),p99
(参考)経済産業省:デジタルスキル標準ver.1.2<改訂後版>(2024年7月),p83,共通スキルリストの全体像(※2024年7月改訂)
DX人材に求められるマインドセット
DX推進は単にITシステムを導入するだけでなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を伴うため幅広い知識とスキルが必要です。またデジタル技術は急速に進化しており、ビジネス環境も常に変化しています。変化に対応し、新しいアイデアを生み出す力が求められます。DX人材に求められるマインドセットについて解説します。
新しい知識やスキルを積極的に学び、自己成長を続けられる
IT業界における技術は日進月歩です。先進技術やツールの登場に常にアンテナを張り、学び続ける姿勢が不可欠です。
変化を恐れず、新しい知識や経験を積極的に取り入れることで、成長の機会と捉えられる考え方をもった人材が向いているといえます。
新しいことに挑戦し、失敗を恐れず学びを継続する
新しいアイデアや技術に挑戦し、常に新しい価値を生み出すことを目指します。また失敗を恐れずに、そこから学ぶことで改善へと繋げられます。
リスクを恐れず、不確実な状況でも積極的に行動し、新しい可能性を探求するようなタイプの人がよいでしょう。
好奇心をもって主体的に物事に取り組める
未知の領域に対して強い好奇心を持って探求できること、与えられた仕事だけでなく、自ら課題を見つけ出し解決策を提案できる積極性が重要です。
チームで協力し、多様な意見を尊重できる
チームの一員として、協力し合い、目標を達成します。相手の立場に立って考え、自分の意見を主張しつつ相手の意見も尊重してチームで協力できること、独善的に一人で行動するのではなく他のDX人材やロールと連携できることも大切です。
偏見なく他者の意見を取り入れられ、新しいアイデアや意見に対して柔軟な姿勢で受け入れられる人は、多様な価値観を尊重し、異なる意見を組み合わせることで、より良い解決策を生み出せるでしょう。
最後までやり遂げる
一度決めた目標に対して、最後までやり遂げる強い意志を持ち、問題が発生しても、諦めずに解決策を探して目標達成を目指せる責任感が必要です。
DX人材の慢性的な不足に悩む企業の課題
DXが企業にとって不可欠なものとなる中、専門であるDX人材の不足が深刻な問題となっています。この人材不足には、様々な要因が考えられます。
DX人材が不足する理由
(1)デジタル技術の急速な進化
DXに必要な技術は日々進化しており、それに伴い求められるスキルも高度化しています。企業が人材育成に追いつくには継続的な育成体制の更新や教育者の確保、情報の収集と周知が必要になりますが、これらにかかるコストは膨大になるため、困難な状況と考えられます。
(2)既存のIT人材とのスキルギャップ
従来の「IT人材」は、DXに必要なデータ分析、AI、クラウド技術など、新たなスキルや知見、技術を持った人材ではなく、新しいDX人材とのスキルにギャップが生じています。
(3)人材の流動性が低い
DX人材は市場価値が高く、優秀な人材は常に引く手あまたです。そのため、企業が優秀な人材を確保し、定着させることが難しくなっています。
質・量の不足、偏在が課題
DX人材の不足は、単に数が足りないというだけでなく、質や分布にも問題があります。
(1)質の不足
DXを成功させるためには、技術的な知識だけでなく、ビジネスに関する深い理解や、変化に対応できる柔軟性も求められます。このような複合的なスキルを持った人材が不足しています。
(2)量の不足
データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニアなどの技術職だけでなく、全体的にDX人材は量が不足しています。
特に古いシステム(レガシーシステム)の運用・保守を担っていた人材も年齢的に退職の時期となっています。このため、レガシーシステム自体がブラックボックス化しているケースは日本国内では多くあるとされています。新しい知識をもつ人材が、古いシステムの運用や保守に駆り出され、ムダなコストが発生しているうえ、新しいシステムの構築まで手が回らないといった事態も起きています。
(参考)経済産業省:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
(3)偏在
DX人材は大都市圏や特定の業界に集中している傾向があり、地方や中小企業では、より深刻な人材不足に悩まされています。企業によっては、地域の大学と提携し、早い段階でIT分野を専攻する学生を取り込もうとする動きもあります。
DXに対する経営層の理解不足
DXとは何か、DXで何ができるか、どのように改善できるかが経営層にコミットできていないケースが多くあります。
特に、「DXを推進すれば、今60点のものが100点になる」と勘違いする経営層も多いようです。DXはあくまでも手法、方針であり、使い方、取り入れ方、運用する経営層や従業員の在り方によって結果がどのように現れるかは異なります。
DX推進でITシステム化を進めればよいわけではなく、また人材を確保すればよいわけでもありません。このことを理解していないと、高いコストを払ってDX人材を集めても結果として何も得られないおそれがあります。
DX人材を獲得する方法
DX推進を成功させるためには、最新のデジタル技術に関する知識やスキルを持った人材の確保が不可欠です。人材獲得には、採用、育成、アウトソーシングの活用があります。
DX人材を「採用」する
日本におけるDX人材の不足は慢性的な問題になっています。すぐ必要な人材が十分に採用できることはあまり期待できません。長期的な計画を立てて採用を継続する必要があります。
DX人材を「育成」する
社内で専門的知識をもつ人材を育成する方法です。やる気のあるだけではなく、前述のスキルセットに照らし合わせて必要なスキルやマインドをもつ人物を育成する必要があります。
またこの方法を採るには社内での教育体制が必須です。外部教育機関との連携もケースによっては必要になるでしょう。
DX人材を「アウトソーシング」する
DX人材を内部で抱えず、外注する方法です。この方法の場合、比較的すぐに必要な人材を確保できる可能性があります。
ただしアウトソーシングのための費用が継続的に発生すること、企業の機密情報を預けられないこと、自社内にDX人材が育成できないこと、企業固有のシステムなどへ十分に対応できないこと、などの懸念点があります。
以上のほか、DX人材を獲得した後も定着してもらえる体制づくりが必須です。例えばリモートワークの導入など多様な働き方の推進、キャリアパス設計など成長機会の提供、DXに理解があり能力を発揮しやすい魅力的な職場環境の整備などがあります。
DX人材獲得のための対策
DX人材を継続的に獲得し定着させるための課題と、どのような対策を行うべきか解説します。
(参考)「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」3-2.デジタル人材の育成・確保
企業戦略に合ったDX人材に必要なスキルを明確化する
DX戦略の推進に必要な人材にどのようなスキルが必要か、経済産業省の「デジタルスキル標準」のスキルマッピングシートなどを参照しながら明確化しましょう。
DX人材のスキルが正当に評価される人事制度を採用する
DX推進に必要な専門知識を身につけた社員が十分にその知識を活用できる人材配置の仕組みがあること、スキルを証明できる試験などの明確な基準があること、明らかになったスキルが適性に評価され処遇される人事制度があることなど、必要な制度を採用しなければなりません。
DX人材を受け入れる体制を構築する
DX推進の責任者を置き、体制を構築します。また業務の改善や変革にデジタル技術を活用すること、従来のやり方にこだわらずに変革を柔軟に受け入れられる組織改編も重要です。
DX人材育成のための教育体制を構築する
経営者も含めた全社員のデジタル・リテラシーを向上させられるよう、継続的な教育体制を整えます。
組織文化の改革を進める
従業員だけでなく経営層も含めた全社員が、単にITツールを導入するだけでないことを理解し、組織の文化や風土を新しい価値観に合うよう改革していく必要があります。
まとめ
この記事では、DX人材について解説しました。DXを推進するためには、高いスキルをもったDX推進人材の確保が必須です。DX人材の獲得には採用・教育・アウトソーシングがあり、それぞれの特性を生かして少しずつ企業全体の変革に向けて取り組むことが重要です。
弊社スキルアップAIでは、DX人材の育成を支援するサービスを展開しております。企業様のニーズに合わせて最適なプランをご提案することが可能です。
DXアセスメントでは、DXスキルを可視化し、人材育成プランを実施することが可能です。少しでも気になる方は下のバナーより詳細をご覧ください。

【参考資料】
経済産業省:
「デジタルスキル標準ver.1.2」
「DXレポート 2.2(概要)」
「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」
その他:
「DXの成功要素とDX人材の育成について」岸 和良, 情報の科学と技術 71 (7), 290-295, 2021-07-01, 一般社団法人 情報科学技術協会
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