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DX推進におすすめの補助金とは?申請の流れやメリット、注意点を解説


DXを推進したいものの、コスト面の問題でなかなか踏み出せない企業も多いのではないでしょうか? 実際、中小企業基盤整備機構が行った
中小企業の DX 推進に関する調査(2024 年)
では、取組む予定としない理由ついて、「予算が不足している」が全体の23.6%と高い割合を示しています。
そこで、国や自治体の補助金を活用すれば、初期投資のハードルを大幅に下げることが可能です。先ほどど同様の
中小企業の DX 推進に関する調査(2024 年)
でも、DXの推進に向けて期待する支援策について、「補助金・助成金」が 41.6%と最も高く、DX推進を目指す企業からのニーズが非常にあることがわかります。
本記事では、DX推進に活用できる主要な補助金4選を解説するとともに、申請の流れや活用事例、補助金のメリット・注意点について詳しく紹介します。
DX人材育成の助成金に興味がある方は「【最大75%】社員研修で利用できる助成金とは?基本的な申請方法や注意点について解説」記事もご確認ください。
DX推進にかかるコストについて
DXを推進する際に必要なコストは、企業の規模・事業内容などによって異なりますが、国や地方自治体の補助金を利用することで、金銭面での負担を軽減することが可能です。
ここでは簡単に、DX推進に活用できるおすすめの補助金を4つ紹介します。
補助金名 | 対象企業 | 補助対象 | 主な補助金の内容・金額 | 注意点 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
ものづくり補助金 | 中小企業・小規模事業者 | 設備投資、DX推進のためのITツール導入 | 補助率 1/2〜2/3、最大1,250万円 | 審査あり、採択率にばらつきあり | 申請時に詳細な事業計画書が必要 |
IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者 | クラウドシステム導入、業務管理ツール導入 | 補助率 1/2〜3/4、最大450万円 | 対象となるITツールが限られる | 公式サイトで登録されたツールのみ申請可 |
事業再構築補助金 | 中小企業・中堅企業 | 新事業への進出、ビジネスモデル転換 | 補助率 1/2〜2/3、最大1億円 | 事業計画の審査が厳格、自己資金が必要 | 銀行や認定支援機関の協力が必要 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | 販路開拓、Webサイト構築、広告作成 | 補助率 2/3、最大200万円 | 小規模事業者のみ対象 | 申請書類が比較的簡易 |
詳細は次の章で解説します。
DX推進におすすめの補助金4選(詳細解説)
それぞれの補助金について解説します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金(正式名称=ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等の新製品・サービス・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金です。
ものづくり補助金には、「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」などの枠が設定されています。
DX推進においては、「デジタル枠」を活用すると、ITツールの導入や業務効率化のための設備投資が補助対象となります。
項目 | 内容 |
---|---|
対象企業 | 中小企業・小規模事業者 |
補助対象 | 設備投資、DX推進のためのITツール導入、システム構築 等 |
主な補助金の内容・金額 |
省力化枠(オーダーメイド枠): ┗従業員数に応じて750万円~8,000万円 ・製品・サービス高付加価値化枠: ┗従業員数に応じて750万円~1,250万円 ・製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型): ┗従業員数に応じて1,000万円~2,500万円 ・グローバル枠:3,000万円 |
注意点 | 業種ごとに企業規模の上限あり |
補助率 | 1/2~2/3 |
その他 | ・賃上げ達成で上限額引き上げあり |
参照:「ものづくり補助金事務局「公募要領」」
ものづくり補助金は、令和2年3月10日(火)の公募開始以来、通年で公募を行っており、交付申請から交付決定までの期間までは標準で1か月ほどのスケジュールとなっています。
補助金額や補助率、要件等は枠ごとに異なるため、詳細については下記の公募要領をご覧ください。
参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)」
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者に対してITツールの導入を支援する制度のことです。
IT導入補助金は、「通常枠(A・B類型)」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」などの枠が設定されており、下記の表のとおり補助金の上限額・下限額や、補助率などが異なります。
項目 | 内容 |
---|---|
対象企業 | 中小企業・小規模事業者 |
補助対象 |
クラウドシステム導入、ITツール導入、ソフトウェア 等 【補助対象例】 ・クラウド型業務管理システムの導入 ・ECサイト構築 ・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入 |
主な補助金の内容・金額 | 通常枠:5万円~450万円 |
注意点 | ・補助対象は5つの枠に分かれる |
補助率 | 1/2以内 |
その他 | https://it-shien.smrj.go.jp/about/ |
出典:IT導入補助金ポータルサイト「IT導入補助金2023」
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、事業再構築にチャレンジする中小企業や小規模事業者を支援する補助金です。
事業再構築補助金では「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」などの枠が設定されており、それぞれ対象となる事業者や補助額、補助率などが異なります。
項目 | 内容 |
---|---|
対象企業 | 中小企業、中堅企業 |
補助対象 | 新事業への進出、ビジネスモデル転換、事業再構築に関わる費用 等 |
主な補助金の内容・金額 |
・産業構造転換枠: 従業員数20人以下:100万円~2,000万円 従業員数21~50人:100万円~4,000万円 従業員数51~100人:100万円~5,000万円 従業員数101人以上:100万円~7,000万円 ・最低賃金枠: 従業員数5人以下:100万円~500万円 従業員数6~20人:100万円~1,000万円 従業員数21人以上:100万円~1,500万円 |
注意点 | 補助対象とならない経費あり |
補助率 |
・中小企業2/3、中堅企業½ ・最低賃金枠の補助率は中小企業3/4、中堅企業2/3/p> |
その他 | https://jigyou-saikouchiku.go.jp/ |
参照:「事業再構築補助金公式サイト」
以下の公募要領で、要件等を確認できます。
参考:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金 公募要領(第13回)」
また、全枠で共通している必須要件は以下の3つです。
-
事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
事業再構築の定義については、「事業再構築指針」、「事業再構築指針の手引き」をご確認ください。
-
事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること
事業計画について金融機関等又は認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。ただし、補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること。
-
付加価値額を向上させること
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3~4%(事業類型により異なる)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率3~4%(事業類型により異なる)以上増加させること。
参考:事業再構築補助金公式サイト「全枠共通必須要件」
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、全国商工会連合会が運営する、経営計画を作成し、それに基づいて行う販路開拓等の取り組みの経費の一部を補助する補助金です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象企業 | 小規模事業者 |
補助対象 |
販路開拓、Webサイト構築、広告作成 等 【補助対象例】 ・Webサイトの構築・改修 ・販促ツールの作成(チラシ・パンフレットなど) ・生産性向上のための機械装置導入 |
主な補助金の内容・金額 |
・通常枠:50万円 ・賃金引上げ枠:200万円 ・卒業枠:200万円 ・後継者支援枠:200万円 ・創業枠:200万円 |
注意点 |
・10万円超の現金支払いは対象外 ・賃金引上げ枠等は一定要件を満たす必要あり |
補助率 | 2/3(赤字事業者の賃金引上げ枠は3/4) |
その他 | ・インボイス特例で上限50万円増 |
参照:「小規模事業者持続化補助金公式サイト」

小規模事業者持続化補助金の申請から補助事業終了・精算払いまでの全体の流れは以上のとおりです。
DX人材育成の助成金に興味がある方は以下の記事もご確認ください。

補助金の申請方法・手続きについて
前述したとおり、補助金の種類によって申請方法や手続きは異なります。
この章では、国の補助金を利用する際の基本的な申請方法や手続きについて解説していきます。
1.公募・申請
まずは、公募要領に従って必要な書類等を準備し、受付期間中に書類を事務局に提出します。現在は申請作業の電子化が進んでいるため、登録作業に掛かる時間を考慮し、早めに準備を始めると良いでしょう。
2.審査・採択決定
書類審査を経て採択されると、事務局から採択決定通知書が届きます。採択決定後、交付申請書を提出し、その結果を受けて交付決定が正式に決まります。
3.補助対象事業の開始・中間検査
基本的に補助の対象となるのは、事業を行う期間に発生した発注や納品、検収、支払いなどの経費です。ただし、採択が決定する以前に着手している事業に関しては、経費が支払われないケースがあるため注意する必要があります。そのため、事前にどの経費が対象となるのか、要件等を念入りに確認しておくことが重要です。
また、事業によってはこの時点で中間検査などの視察が入ったり、報告要請等が発生したりするケースもあります。
4.完了報告・検査
補助事業が終了したら、完了報告書を提出します。その後、発注に関連する証拠書類が適切であることを確認する「確定検査」が行われるのが一般的です。
完了報告書の内容と発注に関連する証拠書類を審査したのち、補助金の支払額を確定する「補助金額確定通知書」が発行されます。
5.補助金の受領
確定通知書を受け取ったら「補助金支払い請求書」を提出し、申請手続きは完了です。 通常は、1ヶ月以内に指定した銀行口座に補助金が支払われます。
3. 補助金を利用するメリット
この章では、DXを推進する際に補助金を利用するメリットについて詳しく解説します。
DX推進にかかる費用を軽減できる
補助金を利用する最大のメリットは、DX推進にかかる費用の負担を減らせることです。DXを推進する上で多くの企業でネックとなっているのが「費用の確保」です。補助金は一般的に返済の必要がないため、自社の資金と同じように利用することが可能です。また、補助金の種類によっては税控除を受けられるものもあります。
今後の融資にもつながる
補助金の採択が決定した場合、一定の社会的信用度があると判断されるため、金融機関から高く評価されます。そのため、金融機関からの融資を優先的に受けられる可能性が高くなるでしょう。今後の融資につながりやすいという点も、補助金を利用するメリットの一つです。
4.補助金を利用する際の注意点
DX推進に役立つ補助金は多くありますが、補助金を利用する際にはいくつかの注意点があります。この章では、補助金を利用する際の注意点について解説します。
全ての企業が採択されるわけではない
補助金を利用するためには、厳しい審査を通過する必要があります。そのため、申請したすべての企業に必ずしも補助金が支給されるわけではありません。
限られた申請期間内に必要書類を準備する必要がありますが、申請しても不採択になる可能性があるという点は認識しておきましょう。
事務作業に多くの時間が必要
補助金の申請と採択後の報告等を行う際には、さまざまな書類を提出する必要があります。特に企業の繁忙期と重なると、申請期間内に提出できなかったり、事務作業にあたる社員の負担が大きくなったりするため、注意しなければなりません。
補助金の支給は取り組みが終わった後になる
補助金の支給は、原則として取り組み終了後に行われます。そのため、それまでの経費は企業側が立て替えておかなければなりません。
補助金を申請する段階であっても、ある程度の必要資金を確保しておくことが重要です。
5.補助金を活用したDXの成功事例
補助金を有効に活用するためには、他の企業がどのような形で補助金を活用しているのかを知っておくと役に立ちます。
この章では、補助金を活用したDXの成功事例を2つ紹介します。
ものづくり補助金を活用して設備装置や「熱需要予測AI」を導入。市場への安定供給を実現
はじめに紹介するのは、大規模園芸団地に対して熱供給サービスを行っている企業の事例です。
この大規模園芸団地では「しいたけ」を生産しており、栽培ハウスの温度調整が課題となっていました。そこで外気温度が上昇する夏季でも安定した生産を実現させるために、遠隔地からこの装置の運転状況を監視する「遠隔監視機能」や、「構築熱需要予測AI」などの機能を導入しました。
AIが日々変動する熱需要を自動で予測することで最適な熱供給が可能になり、運転監視員の省人化や作業の効率化を実現しました。
参考:ものづくり補助金総合サイト「大規模園芸団地の新規集客に向けた熱供給サービスの拡充」
IT導入補助金でデータベースソフトを導入。低価格でリプレースを実現
2つ目に紹介するのは、学生団体の合宿・研修旅行や手配旅行の企画取扱い、スポーツ大会の企画運営等を行っている企業の事例です。
この企業では、一件のスポーツ合宿の手配だけでも多数の情報を扱わなければならないことや、事業所が増えたために拠点間接続のレスポンスが遅いなどという問題が発生していました。また、業務のオリジナル性が高いこともあり、独自システムの構築を検討することになります。
そこでIT導入補助金を活用してデータベースソフトを導入し、旅行手配の詳細や営業担当者別の進捗や売上、季節ごとの集計などを確認できるようにしました。
また、費用を抑えつつ、約3か月で自社システムを構築することができました。
参考:IT導入補助金「取材事例 株式会社 ヤングリゾート」P7
6.まとめ
今回は、DX推進におすすめの補助金を紹介しました。今回紹介したDX推進に役立つ補助金は、以下の3つです。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
DXを推進する際に補助金を利用すれば、自社で負担する費用を減らせるだけでなく、金融機関から高い評価を得やすくなるなど、さまざまなメリットを得られます。ただし、補助金を申請する際には数多くの事務作業が必要になること、厳しい審査を通過しなければ採択されないということは事前に認識しておく必要があります。

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