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DX推進におすすめの補助金とは?申請の流れやメリット、注意点を解説
近年、多くの企業がDXを推進する取り組みを行っています。その一方で、DXを推進するにはさまざまなコストが発生するため、積極的に取り組めない企業も多いのが現状です。
しかし日本では、DX推進に役立つ補助金が国や自治体から提供されています。今までコストを理由にDXに積極的に取り組めなかったという企業でも、まだまだDXに取り組むチャンスはあります。補助金を有効活用することで金銭的な負担を軽減でき、DXに取り組みやすくなるでしょう。
本記事では、DX推進におすすめの補助金を3つ紹介します。また、補助金を申請する際の基本的な流れや補助金を利用するメリット、注意点についても解説します。
DX人材育成の助成金に興味がある方は以下の記事もご確認ください。
1. DX推進に役立つ3つの補助金
DXとは、デジタルテクノロジーを駆使し、ビジネスや人々の生活をより良いものへと変革することを指します。企業でDXを推進するには、一般的に以下のようなコストがかかります。
- ITツールの導入・開発費
- 社内プロジェクトの立ち上げ・運用に関する費用
- IT人材の教育・採用にかかる経費など
DXを推進する際に必要なコストは、企業の規模・事業内容などによって異なりますが、国や地方自治体の補助金を利用することで、金銭面での負担を軽減することが可能です。
DX推進に役立つ補助金として、以下の3つがあります。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
それぞれの補助金について解説します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金(正式名称=ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等の新製品・サービス・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金です。
ものづくり補助金には、「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」などの枠が設定されています。DX推進を目的とする場合、「デジタル枠」を活用するのが一般的です。
補助金額や補助率、要件等は枠ごとに異なるため、詳細については下記の公募要領をご覧ください。
参考:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)」
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者に対してITツールの導入を支援する制度のことです。
IT導入補助金は、「通常枠(A・B類型)」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」などの枠が設定されており、下記の表のとおり補助金の上限額・下限額や、補助率などが異なります。
通常枠 | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入枠 | |||
---|---|---|---|---|---|
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | ||
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
上限額・下限額 | 5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | 5万円~100万円 | (下限なし)~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
出典:IT導入補助金ポータルサイト「IT導入補助金2023」
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、事業再構築にチャレンジする中小企業や小規模事業者を支援する補助金です。
事業再構築補助金では「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」などの枠が設定されており、それぞれ対象となる事業者や補助額、補助率などが異なります。
以下の公募要領で、要件等を確認できます。
参考:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金 公募要領(第11回)」
また、全枠で共通している必須要件は以下の2つです。
-
事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
事業再構築補助金を申請するには、事業者自身が事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けなければなりません。
また、補助金額が3,000万円を超える案件については、銀行や信用金庫、ファンド等の金融機関の確認も受ける必要があります。 -
付加価値額を向上させること
補助事業終了後3~5年で付加価値額を年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上、または従業員一人当たりの付加価値額を年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させる必要があります。
参考:事業再構築補助金公式サイト「全枠共通必須要件」
2.補助金の申請方法・手続きについて
前述したとおり、補助金の種類によって申請方法や手続きは異なります。
この章では、国の補助金を利用する際の基本的な申請方法や手続きについて解説していきます。
1.公募・申請
まずは、公募要領に従って必要な書類等を準備し、受付期間中に書類を事務局に提出します。現在は申請作業の電子化が進んでいるため、登録作業に掛かる時間を考慮し、早めに準備を始めると良いでしょう。
2.審査・採択決定
書類審査を経て採択されると、事務局から採択決定通知書が届きます。採択決定後、交付申請書を提出し、その結果を受けて交付決定が正式に決まります。
3.補助対象事業の開始・中間検査
基本的に補助の対象となるのは、事業を行う期間に発生した発注や納品、検収、支払いなどの経費です。ただし、採択が決定する以前に着手している事業に関しては、経費が支払われないケースがあるため注意する必要があります。そのため、事前にどの経費が対象となるのか、要件等を念入りに確認しておくことが重要です。
また、事業によってはこの時点で中間検査などの視察が入ったり、報告要請等が発生したりするケースもあります。
4.完了報告・検査
補助事業が終了したら、完了報告書を提出します。その後、発注に関連する証拠書類が適切であることを確認する「確定検査」が行われるのが一般的です。
完了報告書の内容と発注に関連する証拠書類を審査したのち、補助金の支払額を確定する「補助金額確定通知書」が発行されます。
5.補助金の受領
確定通知書を受け取ったら「補助金支払い請求書」を提出し、申請手続きは完了です。 通常は、1ヶ月以内に指定した銀行口座に補助金が支払われます。
3. 補助金を利用するメリット
この章では、DXを推進する際に補助金を利用するメリットについて詳しく解説します。
DX推進にかかる費用を軽減できる
補助金を利用する最大のメリットは、DX推進にかかる費用の負担を減らせることです。DXを推進する上で多くの企業でネックとなっているのが「費用の確保」です。補助金は一般的に返済の必要がないため、自社の資金と同じように利用することが可能です。また、補助金の種類によっては税控除を受けられるものもあります。
今後の融資にもつながる
補助金の採択が決定した場合、一定の社会的信用度があると判断されるため、金融機関から高く評価されます。そのため、金融機関からの融資を優先的に受けられる可能性が高くなるでしょう。今後の融資につながりやすいという点も、補助金を利用するメリットの一つです。
4.補助金を利用する際の注意点
DX推進に役立つ補助金は多くありますが、補助金を利用する際にはいくつかの注意点があります。この章では、補助金を利用する際の注意点について解説します。
全ての企業が採択されるわけではない
補助金を利用するためには、厳しい審査を通過する必要があります。そのため、申請したすべての企業に必ずしも補助金が支給されるわけではありません。
限られた申請期間内に必要書類を準備する必要がありますが、申請しても不採択になる可能性があるという点は認識しておきましょう。
事務作業に多くの時間が必要
補助金の申請と採択後の報告等を行う際には、さまざまな書類を提出する必要があります。特に企業の繁忙期と重なると、申請期間内に提出できなかったり、事務作業にあたる社員の負担が大きくなったりするため、注意しなければなりません。
補助金の支給は取り組みが終わった後になる
補助金の支給は、原則として取り組み終了後に行われます。そのため、それまでの経費は企業側が立て替えておかなければなりません。
補助金を申請する段階であっても、ある程度の必要資金を確保しておくことが重要です。
5.補助金を活用したDXの成功事例
補助金を有効に活用するためには、他の企業がどのような形で補助金を活用しているのかを知っておくと役に立ちます。
この章では、補助金を活用したDXの成功事例を2つ紹介します。
ものづくり補助金を活用して設備装置や「熱需要予測AI」を導入。市場への安定供給を実現
はじめに紹介するのは、大規模園芸団地に対して熱供給サービスを行っている企業の事例です。
この大規模園芸団地では「しいたけ」を生産しており、栽培ハウスの温度調整が課題となっていました。そこで外気温度が上昇する夏季でも安定した生産を実現させるために、遠隔地からこの装置の運転状況を監視する「遠隔監視機能」や、「構築熱需要予測AI」などの機能を導入しました。
AIが日々変動する熱需要を自動で予測することで最適な熱供給が可能になり、運転監視員の省人化や作業の効率化を実現しました。
参考:ものづくり補助金総合サイト「大規模園芸団地の新規集客に向けた熱供給サービスの拡充」
IT導入補助金でデータベースソフトを導入。低価格でリプレースを実現
2つ目に紹介するのは、学生団体の合宿・研修旅行や手配旅行の企画取扱い、スポーツ大会の企画運営等を行っている企業の事例です。
この企業では、一件のスポーツ合宿の手配だけでも多数の情報を扱わなければならないことや、事業所が増えたために拠点間接続のレスポンスが遅いなどという問題が発生していました。また、業務のオリジナル性が高いこともあり、独自システムの構築を検討することになります。
そこでIT導入補助金を活用してデータベースソフトを導入し、旅行手配の詳細や営業担当者別の進捗や売上、季節ごとの集計などを確認できるようにしました。
また、費用を抑えつつ、約3か月で自社システムを構築することができました。
参考:IT導入補助金「取材事例 株式会社 ヤングリゾート」P7
6.まとめ
今回は、DX推進におすすめの補助金を紹介しました。今回紹介したDX推進に役立つ補助金は、以下の3つです。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
DXを推進する際に補助金を利用すれば、自社で負担する費用を減らせるだけでなく、金融機関から高い評価を得やすくなるなど、さまざまなメリットを得られます。ただし、補助金を申請する際には数多くの事務作業が必要になること、厳しい審査を通過しなければ採択されないということは事前に認識しておく必要があります。
また、DXを推進するためには、DXに取り組む人間の育成も欠かせません。社員研修に役立つ助成金も多くあるため、これらの助成金の活用もご検討ください。助成金の詳細については以下の記事で詳しく解説しています。
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