最終更新日:
【最大75%】社員研修で利用できる助成金とは?基本的な申請方法や注意点について解説
今やどの企業においてもDXの推進は不可避となっており、企業にはAIやデータ分析などを扱えるデジタル人材の育成が求められています。そのため、教育・育成を目的とした社員研修を実施している企業が多く見られます。
このような社員研修は企業の生産性向上につながりますが、外部に研修を委託する場合、研修内容や人数、期間によっては研修費用の負担が大きくなりがちです。
そこで社員研修の費用負担を軽減するために活用したいのが、国の助成金制度です。
本記事では、社員研修で利用できる助成金制度を紹介します。また、助成金の基本的な申請方法や注意点についても解説します。助成金の利用を検討している企業の担当者はぜひご覧ください。
1. 社員研修で利用できる2つの助成金制度
日本には、会社員のスキルアップ・キャリアアップのために、さまざまな助成金制度が用意されています。
この章では、厚生労働省が実施している「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」の2つの助成金制度を紹介します。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、従業員の訓練・研修を行っている事業主に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを支援する制度です。 人材開発支援助成金には、以下の7つのコースが用意されています。
-
人材育成支援コース
人材育成支援コースは、正社員のスキル・ノウハウ向上のための訓練や、非正社員が正社員登用を目的とした訓練などを実施した場合に助成するコースです。 -
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、従業員が能力向上を目的とした訓練を受けるための有給休暇を設け、その休暇を利用して訓練を受けた場合に助成するコースです。 -
人への投資促進コース
人への投資促進コースは、デジタル人材・高度デジタル人材を育成する訓練や、従業員が自発的に行う訓練を実施した場合などに、その訓練費用など助成するコースです。本コースでは、一人あたりの助成金が最大75%かつ賃金助成960円/h(※)となっており、大幅なコスト削減ができます。 ※中小企業の場合。助成金は企業規模によって金額が変わります。 -
事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースは、事業展開によって新たに必要となったスキルやノウハウを習得するための訓練を実施した場合に助成するコースとなっています。本コースも、一人あたりの助成金が最大75%かつ賃金助成960円/h(※)となっており、大幅なコスト削減ができます。 ※中小企業の場合。助成金は企業規模によって金額が変わります。 -
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、建設関連の訓練などを実施した場合に助成するコースです。 -
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、建設労働者のスキル向上のための実習を有給で受講させた場合に助成するコースです。 -
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者の職業に必要な能力の習得・向上のために、継続的な教育訓練を実施する施設の設置・運営を行った場合に助成するコースです。
コースごとの支給条件や対象者、助成金額などの詳細については、以下の厚生労働省のWebサイトにて「3.コース一覧」をご参照ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金活用イメージ
スキルアップAIの講座で人材開発支援助成金を活用した例を1つ紹介します。
通信・インフラサービス業を行う中小企業では、「自社システム開発を進めるための機械学習の知識技能の習得」という課題解消のため、「E資格を目指す機械学習・ディープラーニング講座」を従業員の20人が受講しました。総額660万円のうち、550万円以上が助成され、負担費用を大きく抑えることができました。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、有期契約労働者や短時間労働者などの非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。非正規雇用労働者の処遇改善に際して受給でき、待遇改善における費用面の負担を軽減できるというメリットがあります。
キャリアアップ助成金では、以下の6つのコースが用意されています。
-
正社員化コース
正社員化コースは、派遣社員などを含む非正規雇用労働者を正社員に転換する場合に助成するコースです。 -
障害者正社員化コース
障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換する場合に助成するコースです。 -
賃金規定等改定コース
賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し、3%以上増額する場合に助成するコースです。 -
賃金規定等共通化コース
賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等と正規雇用労働者に共通の賃金規定等を新たに規定・適用する際に助成するコースです。 -
賞与・退職金制度導入コース
賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入する場合などに助成するコースです。 -
短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者労働時間延長コースは、有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用する場合に助成するコースです。
「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」は正社員化を支援するコースとなっており、他の4つのコースは従業員の処遇改善を支援するコースとなっています。
キャリアアップ助成金の各コースの要領については、以下で確認することができます。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金支給要領(令和5年6月26日付)」
2. 社員研修で助成金を利用するメリット
社員研修で助成金を利用することは、企業と社員のどちらにもメリットがあります。
この章では、社員研修で助成金を利用する利点について詳しく解説します。
研修費用の負担を軽減できる
社員研修を外注する場合は質の高い研修が期待できますが、その分研修費用の負担が大きくなります。研修内容や期間、受講人数などによっては、数百万円以上になるケースもあるでしょう。助成金を活用することで、これらの研修費用の負担を軽減することが可能です。
社員のスキル向上につながる
外部の社員研修を受けることによって、これまでにはなかった新しい視点やノウハウ、スキルなどを得ることが可能です。研修を受けた社員のモチベーションアップ・スキルアップが期待でき、自社の生産性や競争優位性の向上につながります。
3. 社員研修で助成金を利用する際の注意点
助成金の申請プロセスは複雑で、準備に時間がかかってしまう場合も多くあります。また、特定の要件・条件が設定されているため、これらを満たさなければ助成金の交付、継続などが難しくなります。
申請が完了するまでに時間がかかることが想定されるため、余裕を持たせたスケジュールを立てておき、スケジュール通りに申請を進めていくことが重要です。
4.助成金の申請方法・手続きについて
「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」などの助成金を利用するためには、さまざまな準備が必要になります。この章では、それぞれの申請方法・手続きの流れについて解説します。
人材開発支援助成金の申請方法・手続きの流れ
人材開発支援助成金の申請は、以下の流れで進めます。
-
訓練計画の提出
訓練開始日から起算して1か月前までに「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」などの必要書類を各都道府県労働局へ提出します。 -
訓練の実施
事業内訓練等を実施します。または、教育訓練施設で実施される事業外訓練等を受講します。 -
支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書(様式第4号)」などの必要書類を各都道府県労働局へ提出します。 -
助成金の支給・不支給の決定
支給審査の上、支給・不支給が決定します。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」P31
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請方法・手続きの流れ
キャリアアップ助成金の申請の流れについて、「正社員化コース」を例に解説します。
-
キャリアアップ計画書の作成・提出
キャリアアップ計画書には、いつ頃に正社員への転換を行うかや、目標を達成するための措置などを記載します。これをコース実施日の前日までに各都道府県労働局へ提出します。 -
就業規則等の改定
次に就業規則等の改定を実施します。正社員等への転換についての規定を就業規則に盛り込みます。 -
就業規則等に基づく正社員化
就業規則に則って試験や面接を行い、正社員化に伴う一連の手続きを行います。 -
正社員化後6か月間の賃金の支払い
正社員転換後6か月の間雇用を継続し、賃金を支払います。正社員化前6か月と比較して3%以上の賃金の増額が必要です。 -
支給申請
6か月分の賃金を支給した翌日から起算して2か月以内に各都道府県労働局へ支給申請を行います。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」
5.助成金を利用した企業の事例
人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金は、国内のさまざまな企業で活用されています。この章では、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金を活用した企業の事例を2つ紹介します。
【人材開発支援助成金を活用した事例】IT分野未経験者の即戦力化を実現
ある企業では、IT分野の経験者を優先的に採用していましたが、人員の確保が困難になってきたこともあり、未経験者の採用も検討することにしました。しかし、未経験者を一から教育することは難しく、なかなか未経験者を採用することができませんでした。そこで、人材開発支援助成金の「人への投資促進コース(情報技術分野認定実習併用職業訓練)」を活用しました。
この助成金を活用することで、プログラミング講座などを受ける際のコストを軽減し、未経験の状態からでも一人前のSEへの育成が可能となりました。また、未経験者の若者の採用も積極的に行いやすくなりました。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金活用例」P2
【キャリアアップ助成金を活用した事例】パートタイマーの適正な昇給を実施し、従業員のモチベーションアップ・生産性向上を実現
観光客への食事等の提供や、郷土名産品の販売などの事業を行っていた企業では、パートタイマーの賃金を3等級で区分していましたが、明確な評価基準がない状態が続いてました。また、人材の確保・人材の流出予防の観点から、各労働者の職務内容や能力に応じた評価を適正に行う必要がありました。
そこで「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」を活用し、パートタイマーだけではなく、正社員・準社員に対しても職務評価を行って昇給を実施。適正に評価されることで賃金に対する納得感が高まり、従業員のモチベーションアップ・生産性向上につながりました。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)<職務評価の取組事例>」
6. まとめ
本記事では、企業の社員研修で利用できる助成金制度を紹介しました。
「人材開発支援助成金」は、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを支援する制度であり、「キャリアアップ助成金」は非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度となっています。
助成金を利用することで、社員のスキルアップが期待でき、研修費用の負担軽減にもつながります。
人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の利用ケース、申請の流れなどについて、お役立ち資料「企業がDX人材育成に使える助成金まとめ」で詳しく解説しています。DX人材の育成加速などに助成金を活用したいと考えている企業の担当者はぜひお役立て下さい。
またスキルアップAIでは、人材開発支援助成金の教育訓練として活用できる講座・研修を数多く提供しています。例えば、以下の講座・研修を実施しています。
- DX講座
- ITリテラシー講座
- G検定対策 AIジェネラリスト基礎講座
- DS検定リテラシーレベル対応 データサイエンティスト基礎講座
それぞれの講座の詳細については、下記のページをご覧ください。
https://www.skillupai.com/private-training/recommended_course/
配信を希望される方はこちら
また、SNSでも様々なコンテンツをお届けしています。興味を持った方は是非チェックしてください♪
公開日: