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論文検索アプリ「ScholarPlanets」を用いて、次世代航空機の研究について調べてみた
こんにちは。スキルアップAIの西本です。私は航空工学を専門に研究を行っております。
研究を進めるにあたっては文献調査が大変重要になってくるのですが、研究の歴史を辿るというのは実に骨の折れる作業です。弊社がリリースする論文アプリ「ScholarPlanets」を利用すれば、そうした作業を簡便化することができて調査の苦労から開放されます。
本ブログでは、実際にScholarPlanetsを用いた使用例として次世代航空機Blended Wing Body機の設計法に関する論文、およびその研究の系譜を調査した結果をご紹介いたします。
GANの研究を調査した記事はこちら
1.ScholarPlanetsとは
本アプリは、学術論文のつながりを視覚化するツールです。学術論文のつながりは、論文の引用情報および被引用情報を利用して調べ上げられ、その結果は有向グラフで可視化されます。
本アプリの特長は次の5つです。
- 研究の系譜がわかる
- 重要論文が一目でわかる
- 論文をブックマークできるので必要な時にすぐに探すことができる(開発中)
- 論文にいいねができるので他のユーザに人気の論文がすぐにわかる(開発中)
- 論文にコメントを投稿できるので他のユーザと意見交換ができる(開発中)
2.使い方
使い方は次の通りです。
- 検索窓に調べたいキーワードを入力し、論文を検索する。
- 検索結果一覧の中から気になる論文を選択する。
- 表示された有向グラフから、2.で選択した論文や関連した論文を調べる。
さらにノードをクリックすることで論文詳細を確認できる。
なお、表示される情報はSemantic Scholar Open Research Corpus[1]の情報に基づいており、検索結果に表示される論文の中には著作権などの理由で無料閲覧できないものも含まれます。
3.実際に使用した結果
本ブログでは、ScholarPlanetsの使用例として次世代航空機Blended Wing Body機の設計法に関する論文を調査した結果を紹介します。ここで、Blended Wing Body機とは、次の画像[2]のようなマンタ型の航空機のことを指します。
まずは、検索窓に「Blended Wing Body, Aerodynamic Design」と入力し、検索ボタンをクリックします。
すると、検索結果の一覧が表示されますのでその中から気になる論文を選択します。今回は、一番上部の「Aerodynamic design methodology for blended wing body transport」という論文を選択してみました。
前頁で選択した論文を始点とした研究の系譜が有向グラフで表されます。有向グラフを拡大して見ると、それぞれのノードに著者名とその論文の発行年の情報が表示されているのが分かります。矢印の方向はその論文が引用される方向を向いており、各ノードの大きさはその論文の被引用数が多いほど大きく表示されるようになっています。また、カーソルを合わせるとその論文のタイトルがポップアップされます。
また、左上部の「描画設定」をクリックすると、描画設定に関するパラメータの設定画面が表示されます。そこでパラメータを変更し、「再描画」をクリックすることで有向グラフを再描画することができます。次の画像では、例として引用論文の幅と引用論文の深さを3から4に変更した際の有向グラフを示しています。
以上が本アプリの使い方です。
本アプリを使うことで研究の系譜を調べる作業が一つひとつ手作業で調べるのに比べて圧倒的に簡便化されます。また、有向グラフを詳細に見ることで新たな発見につながるというメリットもあります。その例として、今回の調査結果から新たに分かったことを次に2点述べます。
始点から右上に伸びた矢印の先にあるノードに注目すると、そのタイトルが「Parametric geometric model and shape optimization of an underwater glider with blended-wing-body」となっていました。このことから、次世代航空機の候補として検討されるBlended Wing Body機の空力に関する研究が、水中グライダーの研究にも活かされていることが分かります。
また、3層目(一番右に示されるノード)の中で最も被引用数が多いノードに注目すると、そのタイトルが「Blade Shape Optimization of the Savonius Wind Turbine Using a Genetic Algorithm」となっていました。Savonius Wind Turbineは、騒音レベルが低い点や風向きに依らない点、コストが低い点などから、都市部の風力発電に適した風力タービンの有力候補として検討されている[3]のですが、このように本来の目的である次世代航空機の研究とは一見無縁とも思われる、風車のタービンブレード形状に関する研究にもBlended Wing Body機の空力関連の研究が活かされているということがここから分かります。
4.おわりに
本ブログでは、弊社がリリースする論文アプリ「ScholarPlanets」を紹介しました。本アプリの最大の特長は、研究の系譜を有向グラフで視覚的に表現できるので調査が簡単になる点です。本アプリを使用することで、これまで時間を要した文献調査にかかる手間を省くことが期待できます。
現在、期間限定で無料で利用することができます。また、特長3~5の機能についても、追加されるまで楽しみにお待ちください。
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5.参考文献
- [1] Waleed Ammar et al. 2018. Construction of the Literature Graph in Semantic Scholar. NAACL( リンク )
- [2] R. H. Liebeck, “Design of the Blended Wing Body Subsonic Transport”, Journal of Aircraft, Vol. 41, No. 1, 2004, pp. 10-25, https://doi.org/10.2514/1.9084
- [3] C. M. Chan, H. L. Bai, D. Q. He, “Blade Shape Optimization of the Savonius Wind Turbine Using a Genetic Algorithm”, Applied Energy Vol. 213, 2018, pp. 148-157, https://doi.org/10.1016/j.apenergy.2018.01.029
【監修】スキルアップAI 取締役CTO 小縣信也
AI指導実績は国内トップクラス。「太陽光発電発電量予測および異常検知」など、多数のAI開発案件を手掛けている。日本ディープラーニング協会主催2018E資格試験 優秀賞受賞、2019#1E資格試験優秀賞受賞。著書「徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集」(インプレス)。
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