導入事例
創薬領域の高度化とバリューチェーンでの生産性向上を目指し、全社での生成AI活用を推進
- 研修前の課題・背景
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社内に生成AI利用環境を構築し、勉強会や情報発信を行っていたが、十分な実務活用に至らなかった
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社員が具体的な生成AIの活用イメージを持てていなかった
- 研修後の効果
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全社向けのライトなセミナーに、録画受講含めて1,000名以上が参加し、生成AI概要やプロンプト作成の基礎を理解し、ツール利用のきっかけとなった
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生成AIアイデアソン講座とプロンプト作成質問会を通じて、受講者から実務で活用できるプロンプトが約40個生まれた
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各部署の推進役が生成AI活用スキルを率先して身につけ、自部署内での活用推進を行うことで利用者数が増加
研修のポイント
- 1時間の簡潔な[生成AI活用セミナー]で生成AI活用の重要性やプロンプトの書き方の基礎を全社員向けに実施
- 各部署の推進リーダーを対象とした[生成AIアイデアソン講座]で自身の業務プロセスや課題から発想した生成AIアイデアを受講者同士で共有し、活用範囲に対する視野を拡大
- 受講後のプロンプト作成質問会で、各受講者が生成AI活用アイデアとプロンプトを改善・完成させ、自部門において生成AI活用を促進
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対象者
全社員、部署ごとの選抜社員
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研修期間
約 2 ヶ月
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研修内容
生成AI活用セミナー、ビジネスパーソンのための対話型生成AI講座、生成AIアイデアソン講座、プロンプト作成質問会

2024年11月11日に開催されたクローズドイベント『スキルアップAIクライアントカンファレンス』において、中外製薬株式会社デジタル戦略部 佐山 美樹様より「組織的な生成AI活用に向けた 中外製薬の取り組み」と題した講演をいただきました。その要約として、このレポートではスキルアップAIの講座が組み込まれた生成AI活用の全社展開事例をご紹介します。
創薬領域の高度化とバリューチェーンでの生産性向上を目指し、全社での生成AI活用を推進
― 全社的な生成AI活用に向けてタスクフォースを設立、現場との協業体制を整え、900件以上のアイディアが生まれる

中外製薬はがん領域・バイオ医薬品領域に強い研究開発型の製薬企業です。DXにおいては、製薬・創薬に活かして成果を上げることに注力しています。そこで「CHUGAI DIGITAL VISION2030」を掲げ、バリューチェーン全体での生産性向上と、創薬領域の高度化を実現し、最終的には革新的なサービスを、患者様や医療従事者の皆様に提供することを目指しています。イノベーション創出の基盤の一部として、生成AIの活用に大きな期待を寄せており、そのために、全社員が生成AIをパートナーとして使えるように取り組みを進めています。
具体的には、全部門に「推進リーダー」や「推進担当者」をアサインし、様々な部門での生成AI導入・開発・活用を推進する体制を整えました。また、「生成AIタスクフォース」を立ち上げ、全社から生成AI活用アイデアを集め、その実現までの流れをサポートする協業型の体制を構築しました。2024年8月の時点で集まった生成AIアイディア・ユースケースは900件以上に上ります。この中から優先度が高い、実現していくべきというものを選び、タスクフォースがサポートする形で、PoC(概念実証)や本番開発を行なっています。
生成AI活用の要となる人財像と育成のアプローチ
― 生成AI活用人財を2タイプに分けて研修を実施し、波及効果を狙う
生成AIを活用する人財の目指す姿としては「企画・開発者」と「ユーザー」の2タイプを定義しています。企画・開発者の育成は既存のデジタル人財育成研修に組み込み、ユーザーとして活用するスキルは全社員が習得し、全社ごと化する形で行いました。
― 「使ってみる」と「使いこなす」の間の課題
ユーザーとしてのラーニングは「基礎」と「実践」の2ステップとしています。基礎ステップではとにかく使いはじめることをゴールに据えました。そのためできるだけ学ぶことをコンパクトにして、基本的な使い方と注意事項程度に留めています。
ところが、使い始めても次の「実践」までたどり着かない社員もいました。全社員にアンケートを取ったところ「使ったけれども精度が出ない」「いまいちうまく使いこなせない」「メールの要約などはやってみたが、自分の業務のどこで使えるのかがわからない」という声も多く出てきました。そこで、使いこなすためにクリアすべき課題を「自分が期待する回答を得られるプロンプトをつくるスキルを身につける」「業務シーンでの活用レパートリーを増やす」に定め、これを解決するような取り組みを行なっていきました。
― 各部門にいる推進者向けのプロンプト研修・アイデアソンから「実践」の育成をスタート
実際のアプローチでは、まず始めに各部門の生成AI活用推進リーダー・担当者を中心に約150人を対象にプロンプトエンジニアリングのスキルを身につけていただく研修をeラーニングで提供しました。
その後、「業務シーンでの活用レパートリーを増やす」ことを目的とし、アイデアソンを実施し各本部から代表者に参加してもらいました。アイデアソンでは、各参加者に生成AIを活用するアイデアを考えだす方法を身につけてもらうこと、そして、各参加者に自分自身や自分の組織の業務に合わせたプロンプトを作成してもらい、テンプレート化することを狙いとしました。代表者の方々には、ワークショップから約1か月後に作成したプロンプトを提出することを前提として参加してもらっており、ワークショップ後のプロンプト作成期間中には、フォローアップとして質問・相談会を開催しました。結果として、アイデアソンと質問会を通して受講者から約40個のプロンプトが生まれました。
― 作ったテンプレートを部門に普及させるキャンペーンで弾みをつけ、1ヶ月半で1,000人以上の生成AIユーザーが増加
締めくくりには、生成AI活用キャンペーンとして、各推進リーダーや推進担当者の方々に組織内での活用推進を行っていただき、それをタスクフォースでバックアップ・サポートしていくという期間を設けました。全社向けに一律の活用推進をあれこれ行うより、各部門の中で身近な人が生成AIの活用法を伝えたり、アイデアソン参加者が作ったテンプレートを紹介いただいたりすることで、各組織の業務での生成AIの活用場面の広がりにつながりやすいのではないかと考えました。なお、テンプレートの配布は、内製した生成AIアプリを通して行なっています。
生成AI活用キャンペーンは2024年の9月から12月で実施しています。キャンペーンの中で行っていただく活動の例としては、グループ会や部会などでの研修フィードバックやミニ講座、組織内のイベント実施などのほか負荷がかからない方法としては単なる資料共有やプロンプトの共有、講座受講のおすすめなどを組織内のチャットで投稿するだけでもよいですと推進リーダーたちにはお願いをしました。キャンペーンの影響だけではありませんが、中間の10月中旬の時点では、9月の開始時と比べてユニークユーザーで1,500人、月間ユーザーで1,000人多いというデータがとれました。
引き続き内製力の強化と全社での生成AI活用に力を入れていきます。
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